ルヴァン杯が16日、Jリーグは21日に開幕し、新シーズンが本格化する。今年は東京オリンピック(五輪)もあり、日本サッカー界にとって重要な1年になる。セルジオ越後氏に日本代表や各選手、Jリーグなどについて、現時点での問題点や今後への期待を、3回連載で語ってもらった。

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日本サッカー界の新年はいいニュースが少ない。昨年12月のE-1選手権で優勝できず、1月のU-23アジア選手権は1次リーグ敗退。選手もファンも東京五輪に向けて不安を感じた。もしも、五輪本番で1次リーグ敗退という「失敗」に終わったら、森保監督はA代表の指揮権も失いかねないし、「東京経由カタール行き」という世代交代も滞る。東京五輪が今後の日本サッカー界の鍵を握る。

では、五輪に向けてキーマンは誰か? 答えたくても答えられない。どんなチームになるか、まったく見えないからだ。1人でチームを変えられる絶対的な選手もいない。チーム像が見えないから、OA(オーバーエージ)も誰が適役なのか、判断できない。

すべて準備不足によるものだ。森保監督の手腕というより、日本協会の責任だと思う。当初、同監督による五輪世代とA代表の兼任は、相乗効果があると期待した。だが、これが裏目に出た。協会がつくった日程では両チームを管理することは難しかった。興行色優先で、レベルが低くて強化にならない親善試合、マンネリ化した日程が先行。昨年の南米選手権に「仮想OA」を含めた五輪世代で臨んだが、この形をA代表の親善試合などでも継続していたら、違ったはずだ。

いわゆる「ベストメンバー」をそろえた昨年11月の親善試合コロンビア戦では完敗。守りは甘いし、得点ができない。期待された堂安と久保は自分のポジションをこなしているだけで、柔軟性や化学反応に欠け、相手を脅かせなかった。U-23アジア選手権のチームはまるで練習や食事、私生活までマニュアル管理されているよう。自分たちでピンチを打開する、状況を変えることができなかった。タイの暑さの中で自滅し、「五輪では日本の高温多湿が地の利になる」説は説得力を失った。

U-23アジア選手権優勝の韓国を見れば、日本とのチーム完成度の違いは歴然だ。既にメンバーは固定され、強化合宿など準備をしてきた。例えばここにOAとして孫興民(トットナム)が加わったら、さらに強力になる。他にもドイツ、フランス、スペイン、アルゼンチンなどがA代表級のOAを投入してきたら? 「OA3人が入れば日本は強くなる」と楽観視はできない。

予選がなく、最も時間があったはずの日本がいわば「ぶっつけ本番」状態だ。Jリーグ勢から新たな救世主が現れる可能性も、時間的に難しいだろう。3月の親善試合2試合(南アフリカ、コートジボワール)で「本番の形」を見せて、不安を和らげてくれればいいのだが…。OA枠で五輪に出たい選手は少なくないのだから、そこもきちんと競争させてほしい。(日刊スポーツ評論家)