年の瀬に1年を振り返ってみる。今年はサッカー界にとって谷間の年。W杯の翌年でオリンピックの前年。いつもなら五輪予選などが話題に上るが、来年は主催国のため、予選もない。アジア杯で日本は準優勝したが、試合内容など、ほとんど記憶に残っていない(記憶力が良くないという個人的な問題かもしれないけれど)。谷間の年だからこそ、育成のことを考えてみた。

「育成日本復活」。4年前に日本サッカー協会の会長選に出馬した、当時の田嶋幸三副会長が掲げたスローガンだ。田嶋氏は原博実専務理事(当時)に僅差で勝って会長に就任した。4年がたった。育成日本は復活したか? 日本はこの4年間、それまで遠ざかっていたアンダーカテゴリーの世界大会に再び出場できるようになった。しかし、それまでの積み重ねの結果と言われればそれまでの話。

必ずしも田嶋体制になった成果とは言い難い。人を育てる、選手を育てるシステムが軌道に乗るのは、時間がかかる。指導者の意識や力量を充実させる必要もあるし、他競技団体との選手確保の競争もある。少子高齢化が進み、携帯ゲームなどが広く普及されている今、サッカーを選択してくれる子供の数は、減っていく一方だ。

田嶋体制になり、各地方に指導者を指導するコーチを派遣するなど、少しずつ変化をもたらしてはいるが、画期的な改革とは考えにくい。技術委員会で育成を担当しているが、最高責任者が技術委員長の現状は再考の必要がある。Jリーグを担当する副会長(村井満氏)、事業や女子などを担当する副会長(岩上和道氏)がいるわけだから、育成に特化した副会長がいてもいい。47都道府県へのメッセージにもなる。

来年は五輪イヤー&W杯最終予選が始まる(その前に2次予選の残り4試合があるが)。育成より、世間の目は五輪の結果、W杯最終予選に向けられる。こういう時にもコツコツと積み重ねるのが、育成のはず。高校1年生の運動選手(うちの子はフェンシング)を持つ親として、1年間うまく競技力を上げてくれたことへの感謝を込めて、育成を考えてみた。【盧載鎭】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「サッカー現場発」)

◆盧載鎭(ノ・ゼジン)1968年9月8日、ソウル生まれ。96年入社。長女が受験地獄から脱出してくれて気が楽になり、次女のフェンシング成績が気になる今日この頃。20年以上サッカーを担当した経験を元に、後輩記者を育成したいと思っているが、思い通りにいかないのが人生かな。