東京ヴェルディは昨年、Jリーグ最優秀育成クラブ賞を受賞した。同賞が設けられた09年以降、最多3度目の受賞だ。2月28日に行われたJ2開幕戦・愛媛FC戦でも小4からヴェルディ育ちのMF橋本陸斗が15歳10カ月26日でJデビュー。東京Vユースから2種登録されての出場で、久保建英(15歳5カ月1日)、森本貴幸(15歳10カ月6日)に続いて3番目に若く、J2では史上最年少デビューとなった。

同試合では17歳ですでにプロ契約を結ぶMF阿野真拓も先発し、随所に光るプレーを見せた。出場16人中、下部組織出身者は中学時代に系列のウイングス習志野(千葉)でプレーしていたMF加藤弘堅を含めると7人にも及ぶ。今季ヴィッセル神戸に移籍したMF井上潮音や徳島ヴォルティスへ入ったMF藤田譲瑠チマら若手有望株も東京Vユース出身。ヴェルディの育成は他クラブと何が違うのか。

トップチームと下部組織のサッカーがもっとも統一されているのが東京Vだろう。永井秀樹監督自身、ユース指揮官を経ての就任。現在トップにも多くの「教え子」を抱える。「試合の80%を支配する」というコンセプトのもと、子供たちにもボールを大事にする意識が浸透し、よりプロに近いレベルでの戦術理解も求められる。またラモス瑠偉や三浦知良の時代から、ヴェルディといえばブラジルのイメージ。足元の技術を重視し、ボール扱いにたけた選手が多いのも特長だ。

ただ誤解を恐れずに言えば、そういった技術、戦術面での努力はどのクラブにもできること。東京Vが最も他と違うのは、よみうりランドにあるヴェルディ・グラウンドが持つ独特の文化なのではないだろうか。プロもアマチュアも、男子も女子もトップを目指してしのぎを削るあの雰囲気。若い選手でもピッチ上では堂々と自分の意見を述べることが許される、読売クラブ時代から連綿と続く伝統。男子も女子も仲が良く、ヴェルディの名の下に戦うクラブの一体感。それらが“ランド”を特別なものにしていると思う。

今オフ、スポーツ用品大手ゼビオが東京Vの本格経営に乗り出した。まずはお手並み拝見といったところだが、ランドの文化だけは、どうかそのままにしてほしい。あれこそ東京VのDNAなのだから。【千葉修宏】