サッカー日本代表で活躍した名波浩(45=ジュビロ磐田監督)と宮本恒靖(41=ガンバ大阪U-23監督)がWOWOWの特別番組で対談し、ワールドカップ(W杯)ロシア大会に臨む日本代表について語った。前後半の2回連載で紹介する。

 W杯の開幕まで50日を切った。コロンビア、セネガル、ポーランド、格上ばかりと対戦する1次リーグ突破のポイントは。屈指の理論派であり、選手、監督の立場でトップレベルのサッカーと日々向き合う2人が語り合った。

 まず宮本が「ロシア大会では、どういうサッカーをすれば勝てますか?」と問いかけた。名波は「どこと戦っても、守備の時間が長くなる気がする」と素直に言った。

 苦戦は覚悟の上。そう前置きし名波は「得点を奪う、奪わないはあるけど、その時間に相手に脅威を与えられるようなインパクトを残したい。それがないと、(相手に)大したことないと思われる」。あくまで“先制パンチ”、攻撃的な姿勢とその内容がカギを握るとした。

 日本がW杯に初出場した98年フランス大会を経験した名波は、当時日本に最も足りなかったのは環境に左右されない力だったと振り返る。

 「整列の時、隣にバティストゥータがいる。髪の毛がベタベタでいいにおいがする。そういう環境に当時のメンバーは慣れていなかった。ピッチに入って、ベロンがいる! オルテガがいる! ってなってしまった」

 W杯独特の雰囲気、世界中のサッカーファンが知る名手が相手にいる。その現実に直面。迫り来るプレッシャーは想像以上だった。

 当時、日本代表には海外組が1人もいなかった。「自分たちの身の丈を知ったというのは、間違いなく成長できた部分」と名波は振り返る。

 あの時、3連敗で大会を終えたことが日本の本当の意味でのスタートだった。その後、名波も宮本も海を渡り海外でもプレーした。長い年月を重ね、日本代表の大半を、海外組が占めるようになった。

 話はロシアにとどまらず、日本サッカーが歩むべき道はどこかというところまで広がる。

 名波は、個人でも打開力を持った選手が出てきたことで、当時より勝利への可能性はグンと高まっていると見る。

 初出場の98年フランス大会から、個の能力は高まった。その一方で名波は「打開はできるが、今度はボールが動かなくなるという負の流れになっている」と、実に“らしい”視点で現状を的確に表現した。

 攻守で組織力を武器にしてきた日本サッカーの特長、それを消さないまま、選手の能力向上にマッチする戦い方、チームを作り上げていくことが大切だと考える。これは価値ある提言だ。

 日本のスタイル。それをいち早く確立することが、今後のレベルアップには欠かせない。98年の初出場からもう20年がたつ。

 「自分たちの悪かったところを全部くみ取って、これから成功体験をどんどん増やして成長してほしい」。名波の言葉に宮本は深くうなずいた。

 では宮本は、現状をどう感じているのだろう。

(敬称略、後編へ続く)

※番組は5月3日(木・祝)午後6時30分からWOWOWプライムで無料放送