稲本弾で勝つ! J2札幌が今日8日、栃木県グリーンスタジアムで栃木と開幕戦を行う。新加入のMF稲本潤一(35)は本職のボランチで先発出場が濃厚。97年にJリーグ最年少出場記録を更新し、02年W杯日韓大会では2得点を挙げ日本を初の決勝トーナメントに導くなど、日本サッカー史を変えてきた。今度はJ2初陣でゴールを決め、札幌をクラブ史上初の3年連続開幕戦勝利に導く。

 ベテランはブレずに淡々と準備を整えた。栃木・宇都宮市の作新学院大グラウンドで、約1時間半の全体練習を終えた稲本は、居残り練習に励む後輩から離れ、1人ピッチ脇に座った。入念にストレッチをすると、ボールの上に腰を下ろしシューズのひもをほどきながらチームメートの練習をながめ、再びストレッチ。最後はクーラーボックスに座りながらテーピングを外し、引き揚げた。

 ついに新天地札幌での1歩を踏み出す。沖縄合宿の終盤に右ふくらはぎの張りを訴えるも、熊本合宿中に復帰し、しっかり本番に合わせてきた。「コンディションは上がってきている。開幕戦はいい状態で臨めると思う」。プロ19年目の35歳に気負いはない。海外4カ国でプレーした経験を糧に、自然体で自身10チーム目の初戦に臨む。

 初陣にはめっぽう強い。G大阪時代の97年のJリーグ初出場も、フルハム時代の02年プレミアリーグ初出場ともに4-1と快勝している。J2初陣に向け「最初で勝てば、ほっとする。どんな形でも勝ちたい」と強い口調で言った。

 数々の歴史をつくってきた男が、今度は札幌のクラブ史に名を刻む。栃木戦は、W杯日韓大会で2ゴールを挙げたときと同じ右ボランチでの出場が濃厚。本職での出場に「中盤では得点が求められる。チャンスがあれば点に絡むプレーをやっていきたい」と意気込んだ。13年前の劇的なシーンを再現し、昨季からお預けになっていた、札幌のリーグ通算300勝につなげる。

 熊本合宿中の2月23日、オフを利用して熊本城を観光。戦国時代の猛将、加藤清正が築いた屈強な天守閣と、上にいくほどに垂直に近づき敵を寄せ付けない「武者返し」と呼ばれる石垣を目に焼き付けた。中盤でのボール奪取から前に出て行く力強さは健在。まずはピッチ中央で強固な石垣となり、栃木討ちの起点になる。【永野高輔】

<稲本の初出場アラカルト>

 ◆Jリーグ G大阪時代の97年4月12日、開幕平塚(現湘南)戦で、当時の最年少記録となる17歳6カ月24日でJリーグデビュー。前半32分に松波のゴールをアシストするなど4-1の勝利に貢献。同19日の清水戦では初得点を挙げ、これも当時の最年少記録(17歳7カ月1日)となった。

 ◆W杯 02年6月4日、日韓大会1次リーグのベルギー戦に先発し、1-1の後半22分にゴールを決めた。この試合は2-2で引き分け、日本のW杯初の勝ち点につながった。2戦目の同9日ロシア戦では決勝点を挙げ、日本を初勝利に導いた。

 ◆プレミア フルハム時代の02年8月17日、ボルトン戦に後半24分から途中出場。日本人として同リーグに初出場し、4-1の勝利に貢献。フルハムは連続5試合不敗となり、現地紙に「タリズマン(守り神)」の愛称が付く。