東京の日本代表FW武藤嘉紀(22)が豪快な1発を決めた。1点リードの後半23分、高速ターンから得意のドリブルで、今季初勝利を決定づける追加点をマーク。今日23日に慶大卒業式と代表合宿の初日が控える中、最高の形で学生生活を締めくくった。

 1タッチ目で反転し相手を置き去りにすると、2タッチ目でまたの間を抜いた。武藤は後半23分、MF梶山からの縦パスを受けると、わずか2タッチで2人を抜き去り、一気に加速。約20メートルのドリブルでつけた勢いを乗せた右足シュートは、相手GKの手をはじき飛ばして、ゴールへ吸い込まれた。「ファーストタッチがうまくいった。その後のタッチも、ドリブルでゴールへ一直線にいけたこともよかった」と、ボールを受けてから得点までの計6タッチを振り返った。

 今季3点目でチームに今季初勝利を決定づけた。その決め手は、1タッチしながらの高速ターンに詰まっていた。前日の居残り練習で、ブルーノ・コーチの指導を受けて繰り返した動きだ。体は高速で反転しながらも、浮き球を柔らかなタッチで相手をかわす。「昨日やっていたことが、ちょうどうまく浮かんだ」。ゴールを背にした状態から、前を向くことによって、一層持ち味のドリブルで仕掛けられる。「自分の良さが凝縮したゴールだった」。現役大学生最後の日に、納得の1発を決めた。

 今日23日に慶大の卒業式に出席し、スポーツ分野で優秀な成績を収めた塾生に贈られる「小泉体育賞」を受賞する。「学生最後の試合。明日卒業式があるので、学生生活をうまく締めくくることができた。(両立は)サッカーだけに集中できなくて難しかったけど、両方できたことは人間として大きく成長させてくれた。1年早くプロに入ったことで、人生が大きく変わった」。現役大学生でのプロ契約を結んだ決断は、決して間違いじゃなかったと今、自信を持って言える。

 卒業式後は代表合宿が行われる大分へ向かう。「これからは一サッカー選手の『武藤嘉紀』を見せていかないといけない」。他のフレッシュマンたちが決して味わえない、慌ただしい“社会人初日”が、武藤を待っている。【栗田成芳】