8強が出そろった。矢板中央(栃木)は、今大会2戦10ゴールの立正大淞南(島根)を1-0で下し、2年連続8強入りを決めた。開始2分に先制すると、鉄壁の守備を誇るイタリア代表の代名詞「カテナチオ」ならぬ“イタ(板)ナチオ”で完封に仕留めた。

前半2分に矢板中央の主将を務めるDF白井陽貴(3年)がセットプレーから先制し、この1点で逃げ切った。体を張った守りでも大きく貢献した白井は「自分たちの持ち味は守備。矢板中央らしい試合ができた」とうなずいた。

今大会2戦10得点の相手に、FWが自陣深くまで戻ってシュートをブロックしたり、クロスをはね返すこともあった。被シュート8本、ゴールキックは相手の倍近い13本と攻め込まれた。DF五十嵐は「この展開がいつものことなので」とけろり。高橋健二監督は「ちょっと先制が早すぎた」と苦笑いしつつも「点を取られてもおかしくない場面もあったが、よく耐えた」とたたえた。

栃木県大会を無失点で勝ち抜き、失点は今大会初戦2回戦の日章学園戦のオウンゴールだけ。チームの守備リーダーでもある白井は「競り合いに勝ったりとか、快感があります」と守りの楽しさを口にする。五十嵐は171センチとセンターバックとしては小柄だが「失点しないためなら骨が折れてでも体を張ってゴールを隠します」と頼もしく話した。

帝京監督として常勝軍団を築いた古沼貞雄氏(79)が、08年からアドバイザーを務める。古沼氏は堅守の神髄について「技術を使わないこと」と言う。ゴールに近い場所では基本的にトラップやパスをしない。ペナルティーエリア内は必ずワンタッチでクリアする「ゾーン1」と名付け、相手にゴール付近でプレーさせないことを徹底した。77年度大会で5試合無失点で優勝に導いた名将のイズムが浸透している。

準々決勝は2大会ぶり優勝を狙う青森山田と対戦する。高橋監督は「ひたむきに、泥臭く」と言い聞かせるように話した。堅固な“イタナチオ”で、2年連続4強進出を目指す。【岡崎悠利】