岡田武史氏「代表監督と違う重圧」単独インタビュー

岡ちゃんがJリーグに帰ってくる! 元日本代表監督の岡田武史氏(63)がオーナーを務めるFC今治が来季のJ3昇格を事実上、決めた。マルヤス岡崎を1-0で下し、勝ち点49とし、J3昇格条件のJFL4位以内が確定。18日のJリーグ理事会で承認されて正式に決まる。このほど岡田氏が単独インタビューに応じ、14年の経営参画から5年で最初の目標にたどり着いた感慨を打ち明けた。【取材・構成=木下淳】

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岡田氏はJ3昇格に「5年…あっという間だった。スタートアップ(企業)の9割は5年以内につぶれる統計があり、区切りの年でもあった」と胸をなで下ろした。経営を軌道に乗せてJにも到達。社員6人、コーチ10人から始めたクラブは55人になった分、喜びも増す。「全社員と家族を食わせる義務がある。投げ出せない。『辞める』と開き直れる代表監督とは違う重圧があった」と安心した。

14年10月、5部相当の四国リーグだったクラブの運営会社の株式51%を取得。2度W杯を指揮した指導者から、地方クラブの経営者に転じた。鋭い眼光の対象は、試合の分析映像からPL(損益計算書)や毎月5000万円が必要なキャッシュフローへ。一方で指導を任せる難しさも知る。「4年で上がろうと思ったけど甘かった」。15年JFL昇格失敗、16年成功、17年J3昇格失敗、18年失敗。岡田武史でも一足飛びにはいかない。自らの威光に発奮し、100%以上の力を出してくる相手。17年は6位、昨年は5位に泣いた。

特に昨年は耐えた。協会副会長を退任し、監督業に必要なS級ライセンスも返上。「経営が忙しくて楽しくて監督業を想像できなくなった」。オーナーに専念すると鬼になった。夏。14年から今治の一軒家で同居していた盟友の吉武博文元監督(元U-17代表監督)を苦渋の解任。今年も小野剛氏(元協会技術委員長)を監督に据えながら「禁断の手」を打った。9~10月に3連敗すると“現場介入”。あくまで相談した上でチームにアドバイスし、スタンドから現状の問題点を伝えた。ハーフタイムには「これは独り言だ」と言いつつ直接助言。験担ぎでやめていたアウェー戦の同行も解禁し、小野監督の最終判断の支えになった。そして前節の流通経大ドラゴンズ龍ケ崎戦に5-0で圧勝。この時、もう口は挟んでいない。立ち直ったチームは昇格に王手をかけて翌節に達成。苦しんだ2年がうそのようだった。

もちろん伏線がある。昨季終盤は36歳の工藤監督に託した。「自分が41歳で最初の代表監督になった時(協会会長の)長沼さんは何も言わなかった」。97年、加茂監督更迭の後を受けた自分と重ね、昇格は逃したが後悔はなかった。今年も変わらず現場優先の覚悟だったが、昨季の昇格失敗後に突如1000万円を寄付してくれた女性、20部屋ある3世帯住宅を「岡田さんのためなら」と極めて低額で、事務所として貸してくれた夫婦の顔が思い浮かんだ。「最初は今治に友達1人もいなかったのに、最近は認められた実感がある。だからこそ今年、何としても上がる。(禁断の)手を打つ時は体調的にも倒れそうだったけど、心を鬼にして」。夢についてきてくれる人すべてのために、非情になった。その本気度が、元日本代表のDF駒野やMF橋本が4部でも加入してくれる説得材料になった。

18日の理事会で承認されれば晴れてJ3昇格が決まる。次は、横浜監督時代に2連覇したJ1で今治も優勝争いさせる目標へ。22年の開幕に、J2基準を満たす新スタジアムの建設を間に合わせるプランも進めている。胸を高鳴らせ、自身14年ぶりのJへ船出する。

その他の写真

  • FC今治のJ3昇格が決まり、記者会見で笑顔の岡田武史氏(共同)
  • J3昇格を決め、喜ぶFC今治の選手たち(共同)