新型コロナウイルスに感染して都内の病院に入院していた日本サッカー協会(JFA)の田嶋幸三会長(62)が2日、退院した。午後にはウェブ会見を実施し、回復ぶりを報告。見えない敵の脅威にさらされている現状への一助になればと、実際に感染者として入院して感じた思いや提言などを伝えた。

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ウェブ上の画面に登場した田嶋会長は冒頭、協会トップとして感染したことへの謝罪と医療関係者への謝意を示した。その上で「患者になって初めて分かったことだが偏見や差別、患者はもちろん家族や医療関係者にまで起こる。まずそういうことが起きないようにしてほしい。そのためにも医療関係者が感染しないような準備をしっかりしていただくようなことをお願いしたい」と願うように訴えた。

先月16日から入院生活を送った。肺炎の症状は軽度で、微熱は1週間で収まった。だが世間では感染者が急増。院内は日に日に緊張感が高まり、医療関係者が懸命に動き続ける現実を目の当たりにした。医療崩壊は防ぐには、何ができるのだろうか。世間の不安や混乱への助けになればと、病床で感じた思いを語った。

(1)テレワークの推奨 田嶋会長以外JFAから感染者が出ていない理由の1つに、2月26日に決定して継続中のテレワーク実施を挙げた。「ウェブ会議のシステムもなかったが踏み切った。テレワークのインフラがないからとか迷っている法人や組織があるならやった方がいい。間違いなく感染リスクを下げられる」。

(2)退院許可のタイミング PCR検査で2回連続で陰性となれば退院できることに「なかなか退院できないでどんどんベッドが埋まっていってしまう。重症な方が出てきた時に入れない」と危惧。「ぜひ今、医療機関で何が起こっているか、患者たちがどんな気持ちでいるのかもしっかり踏まえた上で、医療崩壊しないように、これ以上亡くなる方が出ないようにしなければいけない」と訴えた。

退院後は自宅に戻らず1人で過ごし、4週間は検温を続けて経過を見る。「命さえあれば後で経済の立て直し、サッカーの立て直し、何だってできる。亡くなってしまったら何もできなくなるということを忘れてはいけない」。強い思いを込めて力説した。【浜本卓也】

<田嶋会長の経過メモ>

2月26日 海外出張へ出発。

同29日 英国で国際評議会年次総会に出席。

3月1日 英国からオランダへ移動。

同2日 オランダで欧州サッカー連盟(UEFA)の理事会に出席。

同3日 UEFAの総会に出席。

同4日 オランダから米国へ移動。

同5日 米国で女子日本代表の国際親善試合の視察や公務をこなす。

同8日 日本に帰国。

同10日 都内でラグビーW杯組織委員会の理事会に出席。JFAハウスにも出勤。

同14日 JFAの理事会に出席。後日に同日が発症日と判明。

同15日 体調不良を訴える。微熱があり、JOC常務理事会を急きょ欠席。夕方に37・5度の発熱。

同16日 文京区の保健所に相談。海外渡航歴と、同じUEFAの会議の出席者に感染者が出ていたこともあり、検査を受けて、都内の病院へ入院。肺炎の症状も判明。

同17日 新型コロナウイルスへの感染が判明し発表。

同19日 JFA公式サイトで田嶋会長便りを更新。「微熱があり、少し肺炎の症状があります」と報告。

同29日 ウェブでのJFA定時評議員会と理事会にて3期目の会長再任を果たした。入院中ながら会議の一部にも参加。

同30日 PCR検査を受け、陰性。

4月1日 PCR検査を受け、陰性。

同2日 午前中に都内の病院を退院し、ウェブで会見を行う。