川崎フロンターレが、史上最速となる4試合を残しての2年ぶり3度目Vを決めた。終盤は足踏みしたが、シーズン中に10連勝と12連勝を達成するなど、圧倒的な強さで数々の記録を打ち立てた。

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4試合を残して史上最速Vを決めた今季の川崎フロンターレの“顔”となったのは、大卒ルーキーのMF三笘薫(23)だった。前節までの25試合で重ねた得点は、J1の新人最多記録まであと1点に迫る12得点。今季のチームの取り組みを振り返ってみると、三笘の活躍は必然だった。

19年はルヴァン杯こそ初制覇したものの、リーグは4位に終わった。敗れた数は6試合とJ1最少だった一方で、引き分けは12試合と2番目に多かった。17年、18年のJ1連覇と合わせて3季連続でタイトルを獲得していたが、鬼木監督は「面白いサッカーをやりたいと思ってきて、煮え切らないものがあった。守りに入っちゃいけない。そういうのを捨てる覚悟でやらないと、チームは引っ張っていけないと思った」という。

従来の4-2-3-1と比べて、今季から取り入れた4-3-3はより攻撃的なシステム。アタッカーと呼ばれる両サイドの2人が最前列に張り、ボールを引き出す。指揮官は「中から崩すこだわりは今でも変わらないが、それだけ中から行く力があるなら、外も使えば点を取れるんじゃないか。単純だけど、両立させたいと思った」との理由で、システム変更を決めた。三笘やFW旗手ら、新戦力を迎えてアタッカーが増えたことも、決断を後押ししたという。

開幕前のキャンプでさっそく、新システムの落とし込みに取りかかった。これが結果として、三笘やDF山根ら新戦力のフィットを手助けした。「チーム全体が新しいことにチャレンジし始めた段階だったので、システムに関しては全員がゼロからのスタート。コミュニケーションが多くとれたのは大きかった。(システムが)今までのままなら、基本的をおろそかにしてキャンプをスタートしたかもしれない」と鬼木監督。完成したチームに割って入るのでなく、チーム作りの過程をともにすることで、新加入選手の理解も深まった。

三笘らの加入後、システムが変わった。システムが変わって、三笘がはまった。双方向の矢印が描く好循環は、開幕前からできあがっていた。【杉山理紗】