みなさんはビニー・ジョーンズ(51)という俳優をご存じだろうか。名前は知らなくとも、こわもてのバイプレーヤーとして、映像を見れば「ああ、この人か」とうなずくはずである。

 デビューは98年。マドンナの元夫ガイ・リッチー監督が撮った「ロック・ストック・アンド・トゥー・スモーキング・バレルズ」で英国人のギャング役を演じた。

 その後もリッチー作品の大ヒット作「スナッチ」や、「X-MEN ファイナルディシジョン」など次々に出演。

 日本人の北村龍平監督(47)がハリウッドに進出したクライブ・バーカー原作の「ミッドナイト・ミート・トレイン」では、深夜の地下鉄で殺りくを繰り返す、恐ろしい殺人鬼の役を喜々として演じた。

 実はこの映画俳優ビニー・ジョーンズ、かつてプレミアリーグで活躍したサッカー選手だったのだ。

 守備的MFとしてリーズやチェルシー、クイーンズパークなどでプレー。ウィンブルドン時代には、88年5月に行われたFA杯決勝・リバプール戦で、1-0勝利の「世紀の番狂わせ」に貢献した。

 ジョーンズはウェールズ代表としても9試合に出場。主将を務めたこともある。サッカー選手としても実に立派な経歴だ。だがその風貌からギャングなど悪役を演じることがほとんどの俳優業のように、ジョーンズはピッチ上でも凶暴だった。

 ウィンブルドンではマークしていたイングランド代表MFポール・ガスコイン(当時ニューカッスル)の股間を握りつぶしたこともある。

 その激しいプレーから、ついたあだ名は「ハード(激しい、厳しい)マン」。ガスコインは英ミラー紙の記事(http://www.mirror.co.uk/sport/football/news/paul-gascoigne-opens-up-incident-5864884)の中で当時を回想。試合後も恐怖から震えがとまらなかったと話している。

 そんなジョーンズがサッカー選手、俳優に続き、新たな職業に挑戦している。なんと今度は「カーペット屋さん」を始めたという。パートナーのダニー・ディーコン氏とともに「ディーコン・ジョーンズ」という会社を設立。ジョーンズが自らセレクトしたカーペットを販売する。

 今度の職業では、自らの持つ凶暴性はあまり生かすことはできないはずだが、はたして成功するのだろうか。

 【千葉修宏】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「海外サッカーよもやま話」)