右肩の脱臼で戦列を離れていたパナソニックの昨年W杯日本代表SH田中史朗(31)が、復帰即トライで復調を印象づけた。後半7分から途中出場。日本代表として出場した6月11日カナダ戦以来の実戦に、アウェーの地ながら多くの拍手が起こった。7点リードで登場して試合を落ち着かせると、同18分には“復帰のご褒美”が待っていた。

 相手陣深く入って左中間でパナソニックボールのスクラム。時計と逆回りに動くと、右側にスペースが生まれた。田中が「行け!」という合図で、NO8の尻をたたく。ところが、パスが来た。「『出ろ』と合図したつもりが、パスが来て。FWのトライですね。(肩は)問題なかったです」。スクラム際を走るだけのダメ押しトライに苦笑いを浮かべた。

 田中が帰ってきたことは、パナソニックにとって大きな追い風だ。ロビー・ディーンズ監督(56)は「彼の経験が生かされた。非常に良かった」と褒めた。FWはフッカーの堀江、NO8ホラニらがチームのまとめ役。ルーキーSO山沢、CTB森谷、WTB藤田らが先発する現チームにおいて、田中は「林、北川さん、僕なんかが声をかけやすい立場」とBKのまとめ役としての使命を口にした。

 パナソニックの強みは経験豊富なベテランと、若手の融合だ。その文化はコミュニケーションで育まれてきた。試合後、WTB藤田は「パナソニックの強み」をこう表現した。「規律の部分だと思います。1人1人の意識が高い。(いいときは)15人以上に見えるディフェンスができると思います」。田中らを中心に引っ張る存在に導かれ、統率の取れた防御網が生まれる。今季初勝利は相手をノートライに封じての快勝。個がまとまれば、4連覇を目指す今年もパナソニックは強い。