平昌(ピョンチャン)五輪金メダル候補の小平奈緒(31=相沢病院)が、女子500メートルを36秒54で制し、昨季からW杯15連勝、国内外のレース23連勝とした。ライバル李相花(韓国)の持つ36秒36の世界記録更新はならなかったが、同種目での五輪前最後となる国際試合を勝利で締めくくった。女子1500メートルは中長距離のエース高木美帆(23=日体大助手)が1分51秒49の日本新記録で制し、W杯4連勝を飾った。

 「こんなに悔しい優勝はない」。無敵の小平が、唇をかみしめた。記録が出やすい高速リンクでの今季最後の500メートル。戦っていたのは見えない敵だった。隣を滑る五輪2連覇中の李が13年にマークした36秒36の世界記録に、同じリンクで真っ向から挑んだ。

 スタートは完璧だった。100メートルを自己最速の10秒14で通過。記録への期待が高まったが、コーナーで「フワフワしてしまった」とやや体が浮いた。36秒54。現実の李には0秒25差の完勝も、「技術の未熟さが出てしまった。36秒36を出したサンファは私よりも技術的に高かった。それが500メートルの世界記録の難しさ」。負けを認めると、さらに悔しさがこみ上げた。

 それでも、W杯の連勝を15に伸ばし、追求してきた滑りが理想に近づきつつあることを証明した。今季目指してきたのは「1%の上積み」だ。連勝街道が始まった昨季から筋力、持久力、体組成とすべてにおいてレベルアップを意識。タイムでも昨季の自己ベスト36秒75から1%縮めた先にある世界記録を念頭に、体をいじめ抜いてきた。

 金メダル最有力で迎える五輪に向け、この日の悔しさは前に進むための力に変える。「世界一の練習を積んできていると思っている。もう1段、もう2段と上げていきたい」と力を込めた。11月末、昨季「実がなり始めたところ」とリンゴの木に例えた自身の力について聞かれると「赤みがかったところです」と笑って答えた。熟した果実を味わうのは、2カ月後の五輪のリンクだ。【奥山将志】