空手界のニュースターが、2020年東京オリンピック(五輪)に向け出陣する。全日本空手道連盟は9日、東京都内でアジア選手権(13日開幕、ヨルダン)代表22人を発表。日本勢は同選手権から五輪切符をかけたランキングポイント制に参戦。男子個人組手75キロ級の西村拳(22=チャンプ)は「何が何でも金」と宣言。元世界王者の父を持ち、空手界の「生きる伝説」ラファエル・アガイエフ(33=アゼルバイジャン)に4連勝中の新星が飛び出す。

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 国内での知名度はあまりない。だが「ケン・ニシムラ」は世界の空手界を激震させている。身長180センチ、俳優の要潤に似たイケメンはアジア選手権を前にして「何が何でも金」と宣言。今月から五輪切符をかけたランキングポイント制がスタート。主要国際大会での成績が、五輪切符につながる。新星が2年間にわたる長い道のりをスタートする。

 東京五輪の金メダル候補だ。ビッグサプライズを起こしたのは16年9月。世界選手権金5個を誇る空手界の「生きる伝説」アガイエフに初対戦で勝った。アガイエフは絶大な人気を誇り、西村にとっても憧れの存在だった。中1の時には、08年世界選手権東京大会を生観戦。身長165センチで男子70キロ級と無差別級の2冠に輝いた姿にしびれた。「70キロのアガイエフが無差別級で2メートル近い相手をちぎっては投げ、ロケットみたいなパンチで倒してた」。

 そんなアガイエフに、元世界王者の父誠司さん(63)仕込みの突きと日本人離れした蹴りで4連勝中。今年に入ってアガイエフに勝ったのは西村だけ。最初は快く声をかけてくれた「伝説」から、最近は殺気を帯びた目でにらまれ、握手にも応じてくれない。西村は「相手が殺気立てば、こっちのチャンスが増える」。

 格闘技界でいえば、500戦無敗で一世を風靡(ふうび)したヒクソン・グレイシーを狩るようなもの。植草、清水ら女子が注目される空手だが、男子はケン・ニシムラがいる。【益田一弘】

 ◆西村拳(にしむら・けん)1995年(平7)12月31日、福岡市生まれ。父誠司さんの手ほどきで競技を始める。宮崎第一高から近大に進学。今春卒業。現在の世界ランクは8位。趣味は映画観賞。好きな食べ物は唐揚げ。好きな芸能人は広瀬すず。家族は両親と兄2人。180センチ、75キロ。