3月の世界選手権(カナダ・モントオール)に出場する宇野昌磨(22=トヨタ自動車)が91・71点を記録し、首位発進した。同選手権代表の田中刑事(25=倉敷芸術科学大大学院)は75・54点の3位となった。

「やべぇ、やってねぇ…」

想定外を宇野は楽しんだ。冒頭で「完璧でした」と振り返る4回転フリップを成功させ、迎えた4回転トーループからの連続ジャンプ。演技前の6分間練習では「気付いていなかったけれど…」と、1度も練習していないジャンプだった。

昼の公式練習はサブリンク。メインリンクでは“ぶっつけ本番”となった。その4回転トーループは着氷が乱れて、単発。それでも最後のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)は出来栄え点で加点を導き、落ち着いて演技を振り返った。

「最初から最後まで、失敗を含めて笑顔になれた。久々の試合なので、ちょっと気持ちが入ってしまった。たくさんの人に見てもらっているという意識で『いつもより踊ろう』とか、そういうのを考えていたら、ちょっと危なかったですけれど…。ジャンプのミスが細かく目立ちましたけれど、僕にとっては悪くないと思います」

競技会は19年12月に4連覇を果たした全日本選手権以来、2カ月ぶり。年明けに06年トリノ五輪銀メダルのステファン・ランビエル氏がメインコーチに正式就任し、スイスで練習を積んできた。22日のフリーでは冒頭、全日本選手権では組み込まなかった4回転サルコーに挑む予定だ。

「サルコーは成功するかもしれないけれど、恐らく失敗するので、失敗した後にちゃんとまとめるということを今回やりたい。たとえ失敗しても、下向きにならずに、笑顔でちゃんと最後まで思い切り滑るのが目標。自分の気持ちひとつで、変な萎縮をしてしまわないように、ちゃんと自分の現状を試合に出したい」

照準はあくまでも世界選手権。前向きな姿勢で、多くの収穫をつかむ。(エリーヌ・スウェーブルス通信員)