フィギュアスケート男子の14年ソチ、18年平昌オリンピック(五輪)2連覇王者で、先月プロ転向を表明した羽生結弦さん(27)が27日、日本テレビ系「24時間テレビ45」に出演した。

競技会から離れ、プロのアスリートとして新たなステージに進んだ後、テレビでは初となる演技を披露。22年北京五輪のショートプログラム(SP)曲「序奏とロンド・カプリチオーソ」を舞った。

あの高貴な水色の輝く衣装で、氷に乗る。

「オリンピックでミスをしてしまった、ある意味、心の傷」

そう表現した冒頭の4回転サルコー。北京では氷上の穴にはまって跳ぶことができず、男子94年ぶりの3連覇に届かない不運となった技に、再び挑んだ。

そして決めた、美しく。

今年の特別アイスショーには、18年の西日本豪雨(平成30年7月豪雨)で被災し、現在も広島県内の仮設住宅で暮らすことを余儀なくされている高校3年生、三浦葉鈴(はれ)さん(17)を招いた。

22年の番組テーマは「会いたい!」。

羽生さんも11年の東日本大震災で被災しながら、五輪で2つの金メダルを手にした。その姿に三浦さんは励まされてきたといい、伝え聞いた羽生さんがアイスリンク仙台に招待した。

今月16日の収録で「日常を忘れられる瞬間になったらいいな」と直接、声をかけた。同じ境遇。「だからこそ再び挑戦したいと思った」と、自身も再び前に進む意志を示すために、未来へ強くなる姿を見せるために「序奏とロンド・カプリチオーソ」を選択した。

「自分たちの過去がありつつ、それが原動力となって、前に突き進む、自分が夢をつかみ取る、という物語。被災された方々にとっては、復興への道じゃないですけれども、記憶たちとともに前へ進んでいくんだってことが届けられると、自分も滑った意味があるかなと思います」

「本当に競技のプログラムなので、自分の気持ちのつくり方もしっかり、試合と同様につくっていきたいなと思いますし、そういう緊張感もまた味わっていただけたらなと思います」

その覚悟で再挑戦した最初のジャンプ。4回転サルコーを降りて呪縛から解き放たれると、続く4回転トーループ-3回転トーループ、トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)も完璧だった。

昨年末の全日本選手権で演技構成点「曲の解釈」の項目で満点をたたき出した曲。そのステップは相も変わらず華麗なままだった。

万感のフィニッシュを決めると、思わず右拳を振り下ろすガッツポーズで喜んだ。上がり切った息で肩を揺らしながら、納得した。

「初めて、ちゃんとこのプログラムが自分の中で完成形として滑り切れたなという思いがあります。僕もすごい怖くて、なかなか踏み出せずにいたプログラムの1つですけど、でも、やっと、これを乗り越えて、また前に進めるなって僕自身が思えたので。皆さんの中で、ほんの1秒でもいいので、前に進むきっかけになってたらいいなって思います」

張りつめた時空から解放された。

「疲れた~。ふふっ。泣きそうだった、緊張しすぎて。ははっ。オリンピックでできなかったものをノーミスしなきゃいけないという」

そう笑いながら、すかさず用意していたサプライズを贈った。三浦さんが愛してやまない平昌五輪の金メダル獲得プログラム、代名詞のフリー曲「SEIMEI」を続けて演じた。

「僕にとっての代表作でもあるし、皆さんにとっても思い出とともに、きっとあるプログラムだなって思うんで。ちょっとでも一瞬でも、いい思い出になったらなと思って」

三浦さんを感動させた。

「一生、忘れません」

今年も被災地へ届くと信じて、2つのプログラムに魂を込めた。

これまでも「24時間テレビ」や同局系の報道番組「news every.」で、東日本大震災や18年の北海道胆振東部地震の被災地を訪ね、地元の人々へ思いを届けてきた。

プロのアスリートになっても羽生さんは変わらず、いや競技者だった時以上に被災者へ寄り添っていく。