クラブ初の頂点には届かなかった。日本代表アウトサイドヒッターの高橋藍(22)が所属するモンツァがペルージャに敗れ、通算1勝3敗で準優勝となった。幸先よく第1セット(S)を先取も、立て続けに3セットを失い逆転負け。高橋は、チーム3位の14得点を挙げたが、勝利につなげられなかった。トレビゾ時代の加藤陽一以来、日本人21季ぶりVは逃したが、移籍1年目でチームの躍進に貢献。確かな手応えを胸に次の舞台、パリ五輪へ向かう。

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ネットに背を向けてうつむいた。4点ビハインドで握られたマッチポイント。勝負はブロックアウトで決した。高橋は歓喜に沸くペルージャコートに視線を向けることなく、唇をかみしめた。負ければV逸の一戦で、第1Sを先取しながらの逆転負け。「手応えもあったので、勝ってシーズンを終わりたかった。相手は攻撃面で強かった」と悔しさをにじませた。

大一番のアタック決定率は30%台にとどまり、勝利に導くことは出来なかった。それでも、このプレーオフ全14試合で挙げた得点はチーム2位の212。サービスエースも同2位の19本決め、持ち味の守備でも魅せた。レギュラーシーズン(RS)は左足首の負傷もあって出場機会が限られたが、チームを1部昇格以降では初の決勝へ押し上げる原動力となった。移籍1年目ながら存在感を示し「この舞台で自分の強みというか成長した部分が出ていた」と手応えもにじませた。

日体大在学中の21年に「自分自身を強くする環境っていうのが、自分にとってイタリア」と海を渡り、3季目。異国で着実に進化を遂げてきた。身長2メートル近い選手を相手にスパイクの高さを伸ばし、打ち方のバリエーションも増やしながら対応。その戦いの中で決勝舞台への渇望は増していった。「自分はファイナルを経験したことがない。そこへ行くことが1つの目標」と誓って臨んだ今シーズン。チームの枢軸として、有言実行してみせた。

昨年10月のイタリアへの出発時、かみしめるように言った。

高橋 どれだけ戦っていけるのか、自分自身がどれだけ力を出せるのか、成長していけるのか。それが強さにつながる。

頂点には立てなかった。しかし、イタリアで描く成長曲線は、確かな強さを伴って、さらに伸びていく。

○…高橋は次なる舞台、パリ五輪へ向かう。日本に帰国後、代表チームに合流。本番に向けてコンディション、チーム力を高めていく。東京五輪はチーム最年少の19歳で出場したが、今回は主軸。大きく異なる立場を自覚しており「東京の時は自分自身が最大限のパフォーマンスを出すことを意識していたが、今はメダル獲得を目指している。目標の位置付けが全然違う。東京の時と違って、自分がチームを引っ張っていける自信がある」と力を込める。ミュンヘン大会以来52年ぶりのメダルへ、まずは5月開幕の国際大会ネーションズリーグの第2週(6月4~9日、福岡・北九州市)からの参戦を視野に、調整を進めていく見込みだ。

◆高橋藍(たかはし・らん)2001年(平13)9月2日、京都市生まれ。小2で競技を始め、蜂ケ岡中から東山高へ進学。3年時の20年に全日本高校選手権(春高バレー)を制し、最優秀選手賞を獲得した。同2月に日本代表登録メンバーに初選出。日体大に進学し、21年東京五輪を経てイタリアリーグに挑戦。今季からモンツァに加入。母方の祖父は米国人。188センチのアウトサイドヒッター。