【第16回】
行動療法で治る射精障害
勃起もするし射精もある。本来なら満足なセックスを得られるはずなのに、腟内での射精がダメ。このような射精障害について、日本性科学会副理事長の「あべメンタルクリニック」(千葉県浦安市)の阿部輝夫院長は、次のように説明する。
「腟内で射精ができない人の中には、長らく行ってきた独自のマスターベーション法により、独特な方法を行わないと、射精ができなくなっています。例えば、マスターベーションで、長年、筒状に巻いた週刊誌を使っていたため、ひんやりとした感触がないと射精できない。あるいは、強すぎるグリップにおいて、普通のマスターベーションでの握力が4・5キロ未満なのに対し、10〜15キロといった強い刺激。つまり、腟の締まりだけでは射精できないといったことです」。
射精障害の原因は主に11個ある。(1)非用手的マスターベーション(2)強すぎるグリップ(3)1人でないと射精できない(4)包茎の手術をした人および仮性包茎の人(5)マスターベーションの方法がピストン運動ではない(6)早すぎるピストン運動(7)上向きでないと射精できない(8)足をつっぱり過ぎている人(9)子孫はいらないという子孫拒否(10)異性の衣類や所持品などを愛好するフェティッシュ(11)体液恐怖
阿部院長は、これらの射精障害に対して、99年に「早漏・射精障害の行動療法であるコンドーム・マス法」を考案した。
「まず、ペニスに潤滑油を垂らしたコンドームを被せて刺激をします。すると、ペニスから出た分泌液で、コンドームの中が腟内のようにヌルヌルとした状態になるのです。そして、ピストン運動を行って射精の練習を繰り返すことで、半年程度で腟内での射精ができるようになります」。
強すぎるグリップの人には、パートナーに指で腟に結合したペニスを刺激してもらう「ブリッジ・テクニック」が有効。射精障害を放っておくと不妊の原因にも結びつくだけに、きちんと専門医に診てもらうことが大切といえる。
【ジャーナリスト 松井宏夫】
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