F1日本GP過去の歴史

【1999年11月1日付本紙より】

ハッキネン逆転総合V2!

 ◇10月31日◇三重・鈴鹿サーキット(1周5・86403キロ)◇決勝◇53周◇出走22台、完走14台◇曇り◇観衆14万6000人

 今季F1最終戦で、ミカ・ハッキネン(31=マクラーレン)が、逆転で2年連続の総合チャンピオンに輝いた。予選2位スタートのハッキネンは抜群のスタートで、ポールポジションのミハエル・シューマッハー(30=フェラーリ)を逆転し優勝。エディ・アーバイン(33=フェラーリ)が3位に終わったため、トップのアーバインと4ポイント差あった獲得ポイントを逆転した。また、コンストラクターズ(製造者)部門では、フェラーリが1983年以来16年ぶりの総合Vを果たした。

燃料を抑え

 王者ハッキネンの揺るぎない走りに、サーキット中のすべての者が脱帽した。「僕には勝つ必要があった。それしか頭になかったんだ」。総合優勝だけでは、満足できなかった。最終日本GPまで、15戦11回のポールポジションを獲得しながら勝ち切れなかった。前戦マレーシアGPでは、7戦ぶりに復帰した最大のライバル、シューマッハーに完敗した。そしてフェラーリの車両規定違反騒動。すべてを払しょくするために、勝利が欲しかった。

 2番グリッドからのスタートに、勝負をかけた。20周分に燃料を抑えたロケットスタートが見事にはまった。「最大のポイントだったからね。後のことはチームを信じて(スタートに)集中した」。下りのため難しいクラッチングを完ぺきに決めトップを奪うと、序盤から飛ばした。19周回後の最初のピットストップでは、7秒近く離していた。その後、猛烈に追い上げるシューマッハーのプレッシャーは、周回遅れの僚友クルサードが好ブロック。「みんなでとったチャンピオンなんだ」と力を込めた。

最高の環境

 「タフな1年だった。でも、スタッフ、家族、友達が助けてくれた」。なかでも昨夏に結婚したエリヤ夫人(37)は、経営する4つの会社の仕事を極力抑えて全戦に帯同、ピット内で夫のレースを見守ってくれた。「私はそばにいて、週末までレースを忘れさせてあげただけよ」とエリヤ夫人。

 最高のマシン、スタッフ、パートナー、そして最高の伴侶(りょ)、文句なしの環境の中で手にした栄冠だった。「これからは、毎年、いや一生優勝するよ」。苦しみながら2連覇を果たした王者の笑顔には、自信がみなぎっていた。【浜口学】

 ◆F1ドライバーズタイトルの過去の2連覇 1952、53年アスカリをはじめ、ファンジオ、J・ブラバム、プロスト、セナ、M・シューマッハーの6人が記録

(写真=ポールスタートのハッキネン(手前)は1度も2位のM・シューマッハー(奥)に前を譲ることなく日本GPを制した)


ミカ・ハッキネンプロフィル

 ◆生まれ 1968年9月28日、フィンランド・ヘルシンキ出身。
 ◆10歳から 10歳からカートレースに出場。87年にカーレース転向。同年のスウェーデンFフォードで年間王者。
 ◆F3王者 名門ウエストサリー・レーシングに在籍した90年、英国F3で9勝しチャンピオン。
 ◆F1デビュー F3000を飛び越し、ロータスから91年米国GPでデビュー。
 ◆初表彰台 マクラーレン・フォードで参戦した93年日本GPで、セナ、プロストに次ぐ3位。
 ◆初優勝 97年の欧州GPで初V。参戦95戦目の初優勝はブーツェンと並び、史上最も遅い記録。
 ◆粋なプロポーズ 昨年夏に4年間の交際を経てエリヤ夫人(37)と結婚。スペインGPの2日後、夫人の誕生パーティーを南スペインのリゾート地マルベジャで開催。パーティーの最後に、ひざまずいてダイヤの指輪を差し出し「結婚してくれますか?」。
 ◆大切なもの 人生で大事なものの1つに、レースに勝った後の気持ちのいいセックスを挙げる。「僕だって男。世の中、男と女しかいないんだよ」。

(写真=ワールドチャンピオンが決まったハッキネン(中央)はカップとフィンランド国旗を手に喜んだ)


アーバイン不完全燃焼

 アーバインは、初の総合優勝のチャンスを最終戦で逸した。この日午前のウオームアップ走行でもマシンのバランスが安定せず、予選からの不調を引きずったまま決勝に突入。5番手スタートから4位に上がったが、3位グループから抜け出せず、3位に終わった。同僚のシューマッハーが優勝できなかったため、ハッキネンにポイント数で逆転され、ランク2位に落ちた。「コンストラクターズタイトルのために、安定した走りを心掛けたよ。クルサードとのバトルも楽しめたし、楽しかった」と悔しさを紛らわせていた。

 今季途中に、来季のジャガー(現スチュワート)移籍が決定。チームから反感を買い、微妙な立場に立たされていた。アーバインは最後まで不完全燃焼に終わった今季の不満を来季の新天地で吐き出す決意だ。

(写真=アーバイン(中央)を抱き寄せて健闘をたたえ合うハッキネン(右)。左は、M・シューマッハー)


M・シューマッハー、スタートミス響く

 M・シューマッハーが、ハッキネンとの最終決戦に敗れた。PPスタートでホイールスピン。ハッキネンに先行され、序盤に差を広げられたことが最後まで響いた。「スタートは私のミスもあったが、車の調子も悪かった」。アーバインの総合優勝をアシストできず、レース後はハッキネンとぎこちない握手を交わした。来年は移籍5年目。このチームで果たしていない総合優勝を狙う。

(写真=スタート直後、M・シューマッハー(左手前)のブロックを巧みにかわしたハッキネン(右手前)は1台だけ混雑を抜け出す)



フェラーリ16年ぶりタイトル

 フェラーリの16年ぶりのタイトル獲得に、ゆうに100人を超えるスタッフが、ドライバー2人を手荒く出迎えた。「みんなの努力をたたえ、胸を張って(フェラーリ本社のある)マラネロ(イタリア)に帰りたい」とジャン・トッド技術責任者。英国GPで右足を骨折したM・シューマッハーを欠き、苦しんだうえにマレーシアの車両違反。多くの難問、難敵を乗り越えての総合優勝にピット内は沸きあがった。

◆F1コンストラクターズタイトル獲得記録 ウィリアムズと今回優勝のフェラーリが9回で最多。マクラーレンが8回、ロータスが7回と続く。連覇は、1988〜91年までのマクラーレン・ホンダの4連覇が最長


無限、年間総合3位! ホンダ復帰へゴー音轟く

 和製の無限ホンダ・エンジンを積むジョーダンが、F1今季コンストラクターズ(製造者)ランク3位にくい込んだ。ハインツ・ハラルド・フレンツェン(32)が日本GPで4位に入り、この日3ポイントを獲得。チームは今季61点を稼ぎ、1992年からF1に参入した無限ホンダ・エンジンを持つチームとしては、過去最高の成績を残した。来季F1に復帰する親会社ホンダの実力を見せつけた。

7年目で最高

 フレンツェンの安定した走りが続いた。4番手スタートから、クルサード、アーバインとR・シューマッハーと3位を争った。途中でアーバインに差をつけられたが、37周目以降は4位をキープ。チームに3ポイントをもたらし、ドライバーズランク3位も勝ち取った。「チームの3位を狙っていたから、最高の結果。自分もランク3位に入ったし、表彰台を逃しても悔しくない」。日本GPに向けて開発された「鈴鹿スペシャル」エンジンのパワーに、満足していた。

 無限ホンダ・エンジンは、ホンダの関連会社「無限」が供給している。92年に、フットワーク・チームに供給してF1参戦を開始。94年を除いて7年目で、過去最高の製造者3位に入った。同社の本田博俊社長は「2強に比べれば半分以下の予算でやっている小さいチームなのに、素晴らしい結果を残せた。来年は2強に迫りたいけど、ここからが大変です」と気持ちを引き締め直した。

黄金第3期へ

 親会社のホンダは来季、既存チームのBARと組んでF1に復帰する。64〜68年に「オールホンダ」体制で臨んだ第1期、83〜92年にウィリアムズやマクラーレンと組んで製造者総合優勝6回を飾った第2期に続く、第3期に相当する。先月26日には、来季からBARに積むエンジンが公開された。今年の無限ホンダの躍進は、来季以降のBAR・ホンダの台頭も予感させた。

データ参考に

 ジョーダンの坂井典次チーフエンジニアは「来季のホンダ・エンジンは、うちのレースで得たデータを参考に作られたもの。来年以降も馬力、耐久性、大きさ、重さの4点で、情報交換しながら無限エンジンを開発します」と話した。ジョーダンとBARが競いながらスピードを増し、マクラーレンとフェラーリの2強を崩す日が近づいている。【柴田寛人】

◆(株)無限 1973年(昭和48年)設立。本社は埼玉県朝霞市。育成レースへのエンジン供給を最初に始め、2輪モトクロスや各種4輪レースに供給を広げる。92年にフットワーク無限としてF1参戦。96年にリジェ無限ホンダで初勝利。昨年ジョーダンで2勝目を挙げた。通算4勝。今年のコンストラクター3位は、昨季の4位を超えた。

(写真=ジョーダン無限のフレンツェンは4位でゴール)


虎之介8戦連続リタイア

 日本人ただ1人のF1ドライバー、高木虎之介(25=アロウズ)は、44周目のメーンストレートで失速し、リタイアに終わった。ギアボックスのトラブルによるもので、これで8戦連続リタイア。今季は1度も6位以内の入賞を果たせず、スタンドに手を振りながらも寂しそうな様子だった。

 「仕方がないよ。マシンが滑るような感じで、うまく走れなかった」。チームは来季のマシン開発に資金を回すため、今年7月以降のテストを中止。後半戦は最後列に近い位置からスタートし、リタイアを繰り返す屈辱に耐えてきた。「走る機会も少ないし、ドライバーとして成長もない。今日はよく走れた方」。来季はスーパーテック・エンジンを積むことが決まっており、馬力アップに期待している。チームとは3年契約を結んでいるが、残留の正式発表はなく、不安なオフになりそうだ。

(写真=フルブレーキでディスクを赤くしながらシケインに突っ込む高木虎之介)


ヒル無念の引退戦

 96年の総合王者、デーモン・ヒル(39=ジョーダン)は、22周目でリタイア。無念の引退レースになった。「ファンの期待にこたえたかっただけに残念だ。多くの応援に、本当に感謝したい」と話した。レース中盤にコースアウト。必死にばん回しようとしたが「時間をかけてもポイントが稼げそうになかったので、ピット作業をやめてもらった」。最後まで元王者のプライドを貫いたラストランだった。


鈴鹿13年で観客400万人突破

 1987年に第1回日本GPが行われてから、13年目。この日、決勝に14万6000人(前年比2000人減)の観衆が訪れ、累積入場者数が、404万1000人に達した。近年モータースポーツの人気低下が進み、国内最高峰のフォーミュラ・ニッポンの観衆は減少している。かつての高木虎之介のように、将来F1に参戦しそうな若手の台頭がないのが最大の要因とみられる。

 F1も一時人気が低迷したものの、昨年の日本GPではM・シューマッハー対ハッキネンの総合優勝争いで盛り上がり、4年ぶりの前年比増を記録した。今年はシーズン中盤にM・シューマッハーが骨折、今季絶望と報道されたために前売りが伸び悩んだが、ふたを開けてみれば、うれしい誤算となった。「直前のマレーシアGPでフェラーリが快走。優勝決定が鈴鹿にもつれたため、この日の入場者につながったのでは」と鈴鹿サーキットの広報担当はみている。

順位 車番 ドライバー チーム・エンジン タイム
1 1 ハッキネン マクラーレン・メルセデス 1時間31分18秒785
2 3 M・シューマッハー フェラーリ 1時間31分23秒800
3 4 アーバイン フェラーリ 1時間32分54秒473
4 8 フレンツェン ジョーダン・無限ホンダ 1時間32分57秒420
5 6 R・シューマッハー ウィリアムズ・スーパーテック 1時間32分58秒279
6 11 アレジ ザウバー・ペトロナス 1周遅れ
7 17 ハーバート スチュワート・フォード 1周遅れ
8 16 バリチェロ スチュワート・フォード 1周遅れ
9 22 ビルヌーブ BAR・スーパーテック 1周遅れ
10 10 ブルツ ベネトン・プレイライフ 1周遅れ
11 12 ディニス ザウバー・ペトロナス 1周遅れ
12 23 ゾンタ BAR・スーパーテック 1周遅れ
13 14 デラロサ アロウズ 2周遅れ
14 9 フィジケラ ベネトン・プレイライフ 6周遅れ
  15 高木虎之介 アロウズ 44周目リタイア
  20 バドエル ミナルディ・フォード 44周目リタイア
  2 クルサード マクラーレン・メルセデス 40周目リタイア
  21 ジェネ ミナルディ・フォード 32周目リタイア
  7 ヒル ジョーダン・無限ホンダ 22周目リタイア
  18 パニス プロスト・プジョー 20周目リタイア
  19 トゥルーリ プロスト・プジョー 4周目リタイア
  5 ザナルディ ウィリアムズ・スーパーテック 1周目リタイア
1位の平均時速は204.086キロ。
最速ラップはM・シューマッハーの1分41秒319(31周目)


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