2013年にユネスコの無形文化遺産に登録された「和食」は、ヘルシーフードとして世界中から注目されています。20年に来日する海外のお客様も本場でたしなむ和食を楽しみにしていらっしゃるに違いありません。ボランティアとして和食のお店にご案内することもあるでしょう。そういった機会に和食の文化を丁寧に伝えるためにも、私たち日本人が和食の食べ方や正しいマナーを身に付けることはとても大切です。

 例えば居酒屋などで箸置きがない場合、テーブルに直接箸を置くわけにはいきませんから、つい自分の取り皿の上に渡すように置いてしまいがちです。これは「渡し箸」といって箸使いのタブーの1つです。そんなとき、割り箸が入っている箸袋をサッと折って箸置きを作ればとてもスマートです。また割り箸の割り方も上下に開くように割るのがマナー。左右に割ってしまうと隣の人にぶつかったり、ビールのボトルを倒してしまったりするかもしれないからです。

 大皿の料理を自分の皿に取ろうとするとき、直箸では失礼だと思い、箸をひっくり返して取る人がいます。これは「返し箸」といって大変失礼にあたります。さも同席者へ配慮しているように思えますが、手に触れていた部分を大皿料理に入れるなどというのは不衛生です。直箸で取るのは気がひけるような相手であれば「直箸でよろしいですか」とひと言断るか、それでもちゅうちょするような場合は店員さんに「取り箸」をお願いしましょう。

 ほかにも箸使いのタブーは数多くあります。どの料理を食べようか迷い、皿の上で箸をうろうろ動かす「迷い箸」。箸で奥の器を引き寄せる「寄せ箸」。つかみにくい料理を箸で突き刺して取る「刺し箸」。箸を片手に1本ずつ持って料理をちぎる「ちぎり箸」。箸についたご飯粒などを口で取る「もぎ箸」。しょうゆなどをたらしながら口に運ぶ「涙箸」などもNGです。

 「涙箸」を避けるために、空いている手を受け皿のように口元に持っていく「手皿」をしている人をよく目にしますが、これも大変無作法です。しょうゆ皿や小皿は手に持って食べてもよいものですので、汁などがたれそうだと思ったら手皿をすることなく小皿を持って食べましょう。日本では箸使いはその人の育ちが分かると言われるほど大切です。美しく箸を使って海外の方に和食の文化を正しくお伝えしたいですね。(筑波大客員教授)

 ◆江上いずみ 慶大法学部卒。JALの客室乗務員として30年間で約1万9000時間乗務。13年にグローバルマナースプリングス設立。15年から筑波大客員教授。大学や官公庁、企業などで「グローバルマナーとおもてなしの心」などの講演を手がける。