年末年始の仕事やイベントでオリンピアンの方々とご一緒しました。年末はノルディックスキー複合の金メダリスト、荻原健司さんと長野県の小学校で20年東京大会のマスコットを選ぶ授業に参加し、今月はフィギュアスケート2大会入賞の鈴木明子さんと、ラジオ番組で平昌大会の展望などを語り合いました。

 小学生の前で荻原さんは照れることなくテンションを上げて、子供たちの心をわしづかみにしました。鈴木さんはフィギュアの若手選手の注目点から、個性に合った選曲などを具体的に分かりやすく解説されました。引退後の元選手に期待されることを、2人は期待以上に実践されている。大いに刺激を受けました。

 私の現役時代には、五輪とパラリンピックの選手に接点はほとんどありませんでした。距離が縮まったのが20年東京大会の招致活動でした。私も引退した10年以降、日本オリンピック委員会(JOC)のアスリート部会(現委員会)に、オブザーバーとして参加して一緒に招致活動をする中で、五輪選手と親しく話すようになりました。

 その環境の変化によって、本当に多くのことを学びました。例えばオリンピックムーブメントへの選手の関わり方や競技を超えたつながりの重要性。一方でマイナー競技の選手が私たちと同じように恵まれない競技環境に苦悩していること…これはパラスポーツだけの問題ではなくて、スポーツ界全体の問題だと気づくこともできました。

 ナショナルトレーニングセンター(NTC)に初めて入った時には、五輪を目指してストイックに競技に打ち込む選手のピリピリした空気に、私やパラ選手のモチベーションがググッと上がり、また違った刺激を受けました。一方で五輪選手からもパラ選手から学ぶことがたくさんあったと聞き、接点を持つことの大切さを感じました。

 20年東京大会へ向けて五輪とパラリンピックの選手が一緒に参加するイベントが増えています。この機会を大切にしてほしい。現役選手は競技に一点集中しがちですが、垣根を越えた違う視点を持ったアスリートとの交流は、息詰まったときに思いがけない刺激や気づきを与えてくれます。

 もし私が現役時代から荻原さんたちと交流できていたら、また違ったモチベーションで競技に取り組めていたかもしれません。

 ◆大日方邦子(おびなた・くにこ)アルペンスキーでパラリンピック5大会連続出場し、10個のメダルを獲得(金2、銀3、銅5)。10年引退。現在は日本パラリンピアンズ協会副会長で、3月の平昌パラリンピック日本選手団長。電通パブリックリレーションズ勤務。45歳。