先月、数年ぶりに車いすバスケットボールの天皇杯日本選手権決勝を観戦して、時代の変化を肌で感じました。20年東京パラリンピックでも同競技の会場となる東京・武蔵野の森総合スポーツプラザは、6000人を超える観客で埋まりました。入場無料とはいえ、国内のパラ競技会場でこんな光景を見た記憶はありません。驚きました。

 特に感心したのが、洗練された試合の演出です。選手の入場から攻守の切り替えまで、音楽や効果音にメリハリをつけて効果的に使い、会場を盛り上げていました。試合中も『なぜフリースロー2本なのか』など、分かりやすい解説を会場にアナウンスしてくれます。初めて見に来た人も楽しめたと思います。

 13年9月の東京大会決定から2年ほどは、大半の競技団体が、大会運営は競技進行だけで、観客の視点に立った見せる工夫や、楽しんでもらうための演出はありませんでした。スタンドの観客もほとんどが家族や知り合い、チーム関係者でした。あれから5年。今回の大会を観戦して、競技団体の力は、かなり差がついてきたと感じました。

 優勝した宮城MAXは女子の藤井郁美選手が、チーム2番目の19点を挙げる活躍をしました。20年大会の女子選手の強化のため、日本協会が昨年の大会から女子にも門戸を開放しました。国際パラリンピック委員会(IPC)も『男女混成』を推奨しています。女性活躍が推進される時代、興行的にも女子の参加は成功だったと思います。

 ただ強化という視点で見ると、少し違和感を感じました。バスケットボールは男女別のチーム競技です。20年大会まで時間がない中で、絶対的エースを育てる狙いなのかも知れませんが、健常者のチーム競技はこの強化策は採用していません。男女混成強化は果たしてチームとしての底上げになるのか。その見解は分かれると思います。

 決勝戦は同点で延長戦に突入する熱戦の末、宮城MAXがNO EXCUSE(東京)を下し、10連覇を達成しました。私の後方のお客さんは試合中ずっと熱狂していました。会場を盛り上げる数々の演出効果も、選手たちがエキサイティングな試合したからこそ引き立つのです。熱気に満ちた観客席は、いろんなことを感じさせてくれました。

 ◆大日方邦子(おびなた・くにこ)アルペンスキーでパラリンピック5大会連続出場し、10個のメダルを獲得(金2、銀3、銅5)。10年引退。現在は日本パラリンピアンズ協会副会長で、平昌パラリンピック日本選手団長を務めた。電通パブリックリレーションズ勤務。46歳。