男子100メートル(切断などT64)で今季デビューの新星、井谷俊介(23=ネッツ東京)が11秒75で金メダルを獲得した。

前日の予選で11秒70のアジア記録を樹立した井谷はスタートで出遅れたが、中盤から加速して、前アジア記録保持者で第一人者の佐藤圭太(27=トヨタ自動車)を振り切った。佐藤は11秒82で銀メダルだった。

井谷は昨年11月に義足で走り始め、デビュー戦となった今年5月の国際大会・北京GPでいきなり優勝した逸材。9月の日本選手権では佐藤に惜敗して2位に終わったが、わずか1カ月で立場を逆転させた。「いつも大きな舞台はすごく緊張するけど、今日は楽しくて、早く走りたい気持ちでした」と自信もあった。

三重県尾鷲市生まれ。津田学園高では野球部の投手。東海学園大在学中はアルバイトで資金を捻出してカーレースに没頭していたが、2年の終わりの16年にオートバイ事故で右膝から下を切断。自分以上に落ち込む家族、友人を笑顔にするために20年東京を目指すことを決意したという。「野球やカーレースもしたけど、アジアで1番は初めて。素直にうれしい」と笑顔を見せた。

10秒台で走る世界トップとはまだ約1秒の差があるが、「来年11秒台の中盤を出して、20年大会では佐藤選手と一緒に10秒台で走りたい」と、果てしない可能性に自分でも期待していた。