車いすテニスで、ジュニア世界王者の小田凱人(15=東海理化)が28日、オンラインでプロ宣言会見を行った。小田は、21年4月26日に、14歳11カ月の史上最年少でジュニア世界1位に輝いた。ちょうど義務教育が終わり、通信制の高校に進学するのを契機に、プロに転向することを決意した。プロの理想像として「病気で闘っている子どもたちのヒーローになりたい」という。

9歳の時に、左股関節に骨肉腫が発症。車いす生活になった。主治医にパラスポーツをいくつか紹介された中で、小田が「最もびびっときた」のが、世界王者だった国枝慎吾の映像だった。10歳で車いすテニスを始め、その4年後にはジュニアで世界を取った。

その国枝とは、今年1月の全豪前哨戦メルボルンオープン準決勝で、初めて対戦した。敗れたが、6-7、6-7の接戦に「一発で決める自分の武器は通用した」と、手応えを感じた。敗退にも「負けたからこそ、学ぶことも多い」と前を向く。

日本には国枝という最高の先駆者がいるが、プロ選手となると数人しかいない。世界でもごくわずかで、限られた世界だ。昨年の全仏の車いすテニスで優勝して約700万円の賞金。一般の優勝賞金約1億8000万円には遠く及ばない。

4大大会でも、まだこれだけの差がある。4大大会に次ぐスーパーシリーズになると、賞金総額で約500万円強。優勝で数十万円の世界である。優勝し続けるならまだしも、通常、賞金だけでは、まだ成立しない。スポンサーの支援、そして国や協会のバックアップが必須で、プロの世界は非常に厳しい。

5月31日に開幕する全仏で、自身初めて4大大会出場を果たす。4大大会は、その時点での世界上位8人しか出場できない最高峰のエリート大会だ。しかし、今年の全仏は、出場人数を12人に拡大。現在、世界9位の小田の出場が決まった。「しっかりと勝利できるように頑張りたい」。15歳の挑戦が始まった。