大峯豊(37=山口)が、前検入りのために、新幹線の小倉駅ホームに降り立った。本人は存在を消すような歩き方をしていたが、オーラは隠し切れず、すぐに分かった。そして足早に雑踏の中に消えていった。

前検で引いたエンジンは34号機。複勝率は25・9%で、今節の中では下位の数字だ。

「エンジン勝率を見て、下がるかって思ったけど、そんなことなかった。ペラは微調整の範囲だし、あとは本体かな」と早くも調整のめどは立てた。

今節はG3アサヒビールカップだ。このタイトルに「特別」な思いで臨む。「アサヒビールのスーパードライの大ファンなんですよ。本当においしいから1日に何本も飲んじゃう。だから今節、絶対優勝して副賞がどうしても欲しい」。いたずらっ子のような顔で笑った。その大峯は引退した今村豊氏についても語ってくれた。

「(白井)英治さんほどではないだろうけど、思い出はたくさんあり過ぎて…。SGも一緒に行ったしね。怒られたこともたくさんあるし、褒められたことも。でも、今村さんは“見て学べ”っていつも言っていたし“背中で見せる”タイプの人だった。だから、仕事の話より、今村さんは美食家だから、どこのラーメン屋さんがおいしいとか、食事関係の話をよくした。本当にたわいもない話しだけど、その1つ1つを覚えている。僕にとってはいろいろなものを与えてくれた人。感謝しかない」。

今村氏を通して野球選手や競輪選手、他のスポーツ選手と交流を持てるようになり、自分自身の幅が広がったという。

よく知られた話だが、大峯の名前は今村氏と無縁ではない。父親が今村氏の大ファンだったため、今村氏の名前である「豊」の字を誕生した子どもに付けた。

「いままでは今村さんがホンモノの“豊”で、僕はニセモノって言われていた(苦笑)。こうして今村さんが引退されて、今度は僕が“ホンモノの豊”になれるようになりたい。名前負けしないように頑張るよ」。今節は低勝率エンジンを手にした大峯だが、話を終えると、その目にはいつものタカのような鋭さが戻っていた。

初日は、オープニングカード1R1枠とメイン12Rドリームレース5枠で登場する。“豊”に乗って、福が来るように舟券を買いそびれないようにしたい。