元日本代表DFの日刊スポーツ評論家、秋田豊氏(46)の「熱血秋田塾・特別編」では、日本代表に初招集されたブルガリアでプレーする無名のMF加藤恒平(27=ベロエ・スタラザゴラ)に切り込む。12年にJ2町田で短期間ながら監督と選手として過ごした。13日のW杯アジア最終予選イラク戦(テヘラン)に向けた千葉県内での合宿を取材し、教え子の成長を確認。ハリルのシンデレラボーイの特長を解説した。

 あの時、5年前から真面目な好青年だった。プレーも真面目。技術やスピードが目立つ方ではなく、体も大きくない。ボランチとセンターバックをしていたが、正直言って特別強い印象を抱く存在ではなかった。

 監督就任が11月末だった。それから約3週間指導し、12月の天皇杯4回戦のG大阪戦に起用し3バックのDFを任せた。翌13年も一緒にプレーしてほしかったが「海外に行きます」と退団した。こういう形で再会できるとは。練習で顔を見て、あのころの記憶が、よみがえってきた。動きをチェックして話もした。DFもしていた当時と違い、海外では1列前のボランチでプレー。ボールを配ることができるようになりプレーの幅が広がったという。もともとボールを奪う面は目を見張るものがあった。スケールアップした感じだ。

 海外組だけの代表のハイレベルな練習に加わったばかりだが、何とか適応できていた。まず、ボールを奪う時の腰の位置に注目した。腰を低く、重心を安定させてドッシリと競り合うから強い。加えて足の使い方がいい。相手の股の下、脇の間からスルスルと足を伸ばしてボールを奪い取る感覚に優れている。独特のイメージ、フィーリングは大きな武器となるはずだ。

 長く代表でプレーして、初招集という選手は何人も見てきた。定着して、生き残ることができる選手には共通点がある。スペシャルな武器を持っているかどうか。私の場合も、たかがヘディングと思われるかもしれないが、それを極めポジションを勝ち取った。彼が強みを発揮できる1対1はピッチ上のいたるところで起きる。ヘディングに比べてアピール機会も多い。練習を見ると、まだ狭いスペースで自分の仕事場を限定した方が持ち味が出る。試合では周りとの連係も大事になってくる。

 代表定着組のもう1つの共通点は、メンタルが強く、若いころから自分がこうなりたいという1本芯の通ったところを持っていること。海外でプレーしてたくましさを増した加藤にも、その片りんを感じた。(日刊スポーツ評論家)

 ◆加藤恒平(かとう・こうへい)1989年(平元)6月14日、和歌山県生まれ。千葉の下部組織から立命大に進む。12年にJ2町田加入。この年J2で29試合に出場。その後はモンテネグロ、ポーランドでプレーし16年にベロエ・スタラザゴラに移籍。W杯アジア最終予選の日本代表に予備登録されていたが、今回が年代別を含め初の日本代表選出。173センチ、70キロ。