北の大地で“チャナティップ狂騒曲”が、吹き荒れている。今月20日、札幌に新加入のタイ代表MFチャナティップ・ソングラシン(23)が、同国の報道陣を引き連れて来日した。これから約1年半、日本に滞在して「タイのメッシ」の密着取材を続けるという。新千歳空港は、日本語とタイ語が入り乱れ、一時、騒然。同国初のJリーガー誕生に、東南アジアで最もサッカー人気が高いという、タイの熱気を感じた。

 チャナティップ入団を契機に、クラブ側もさっそく動いた。来日に合わせて、英語とタイ語の公式フェイスブックを開設。1週間で約1万人がアクセスし、さらには、練習初日の模様を「Jリーグ・タイランド」がインターネットでライブ配信したところ、同時視聴者数は最大1万2000人、180万再生を記録した。これには、クラブ関係者も「日本人よりも爆発力を感じる」と、その熱狂ぶりに目を丸くした。

 このムーブメントに、旅行会社や留学生を多数抱える大学、外国語教室の運営企業も注目している。7月下旬の公式戦デビューを見据えて、JTBがタイからの観戦ツアーを企画。同国最大手の衛星放送局も、視聴者を対象に観戦ツアーを行うことが決まっているという。大学側からは、留学生と選手との交流イベントなどの打診があり、産学連携の可能性がぐっと広がった。

 チャナティップのほか、現在、札幌には韓国人、ブラジル人、獲得がほぼ決まっているイギリス人と、4カ国の外国人選手が在籍。通訳の派遣など、外国語教室を運営する企業側との提携話も動いている。

 札幌は2012年に「アジア戦略室」を設立し、過去にベトナム、インドネシアなどの選手を獲得してきた。クラブの国際化は、新たなビジネスチャンスを生むだけでなく、在籍する日本人選手にもグローバルな視点を植え付けるはず。練習場のある札幌・宮の沢へ向かう地下鉄の車内では、今日もさまざまな言語が飛び交っている。

 ◆中島宙恵(なかじま・おきえ) 札幌市出身。昨年不惑を迎えた。某通信社で約10年の記者生活を経て、2011年北海道日刊スポーツへ移籍。プロ担当は、野球の横浜(現DeNA)ヤクルト、日本ハムに続いて、札幌が4チーム目。