11月26日。仙台のサッカー関係者から問い合わせが入った。インターネットのニュースで、森保ジャパンのメンバーにベガルタ仙台DF椎橋慧也(20)が名を連ねているとのことだった。全くノーマークだったので、強化担当者に当たったところ「協会から何も連絡は入っていないです」とのことだった。

 U-20代表が参加するM-150杯(12月9日開幕、タイ)の暫定リストをタイサッカー協会が誤って公式ホームページにアップしてしまったことが騒動の発端らしい。このニュースはすでにネット上で削除されたが、メンバーの中にはJ2モンテディオ山形FW永藤歩(19)MF長沼洋一(20)の名前もリストアップされていた。長沼は世代別代表で選ばれてきただけに招集が濃厚だが、椎橋が選ばれれば初の代表となる。

 左太もも裏肉離れから復帰したばかりとあって、椎橋の名前が11月30日の正式発表で呼ばれる可能性は低いと思われる。椎橋と永藤はともに市船橋出身。高校時代は15年全国高校総体で準優勝し、優秀選手に選ばれるなどその名をとどろかせた。

 椎橋は今季J1初出場を果たし9試合に出場し1得点、4月26日のルヴァン杯清水エスパルス戦でプロ初出場初ゴールを決めている。永藤は加入1年目にプロデビューを果たし、16年11月6日のV・ファーレン長崎戦でJ初ゴールを決めた。ここまで29試合に出場し3ゴールをマーク。今年5月、山形にJFA田嶋幸三会長(59)A代表の手倉森誠コーチ(49)が視察に訪れた試合で、ゴールを決めた強運の持ち主でもある。プロ2年目ながら主力として活躍しJリーグで結果を残している。

 スポーツ紙はとかく、本田が、長友が、香川が、とフル代表の話題にフォーカスしがちだが、次世代の有望選手たちの動向を取材すると将来像がみえてきおもしろい。全国高校サッカーで大会2連覇を狙う青森山田が、県大会で21年連続23回目と記録を塗り替え優勝を決めた。決勝では、J内定コンビが爆発。J1ヴィッセル神戸に内定しているMF郷家友太(3年)が、4ゴールと爆発しハットトリックを達成すると、J2山形に内定しているFW中村駿太(3年)も2ゴール2アシストを決め勝利に貢献した。

 この2人のキャリアがおもしろい。高校NO・1ストライカーの呼び声高い中村は、今季J1柏レイソルユースから青森山田に転籍してきた。郷家はJ1仙台のジュニアユース出身でユース昇格の道を選ばずに青森山田へ。クラブのユースチームから高体連へ。自ら将来像を描きキャリアアップのためにあえてより厳しい環境へ身を投じる若手が増えてきている。

 出場機会が得られない有名ビッグクラブ入りという選択肢は限られてきた。プロ野球の有力ドラフト候補が12球団OKと公言する時代だ。次世代選手は、J2からでも試合に出場することが自身のステップアップにつながると現実志向に傾いているようだ。大学組もしかり。仙台には、ユニバーシアード代表の流通経済大FWジャーメイン良(4年)、山形には天皇杯16強入りを果たした筑波大FW北川柊斗(4年)の来季加入が内定している。大型補強もままらない仙台、山形にとってはWIN WINの関係となっている。東京五輪を騒がせる若手の台頭をみると、将来の有望株が活躍の場所を求めて東北にやってくる流れはしばらく続きそうだ。

 ◆下田雄一(しもだ・ゆういち) 1969年(昭43)3月19日、東京都生まれ。Jリーグが発足した92年に入社し写真部に配属。スポーツではアトランタ、長野、シドニー五輪などを撮影取材。17年4月に2度目の東北総局配属となり11月から仙台を担当。