名古屋グランパスFW玉田圭司(38)がJ1通算100得点に王手をかけた。3日、満員の神戸戦(豊田ス)で技アリの99得点目を決めた。相手のイニエスタ-ポドルスキが圧倒的な連係とプレーをみせた一戦。日本屈指の才能も、負けじと敗戦の中、プライドを示した格好だ。

玉田はずっと、自身が「特別だ」と言い続けてきた。とにかくサッカーがうまい。だから、こう言っても嫌みには聞こえない。イケメンで家族もみな、とにかく格好いいので、その点には嫉妬してしまうのだが…。

同じ左利きで、ともにプレーした本田圭佑が「タマちゃんは本当、うまい」といつも舌を巻いていた。このエピソードは「タマちゃんに俺のメンタルがあれば…」という、よく分からない最強選手論に行き着くのだが、その話はまた別の機会にでも。

とにかく、玉田は他の選手とは違うんだという部分をよりどころに、その才能に磨きをかけ、プライドを持って別格の存在であり続けようとし、38歳の今も最前線で戦い続ける。

9月に久しぶりに試合を見た。試合前、あと2点に迫った100得点について聞くと「今日は決めないよ(笑い)」と笑っていた。あまのじゃくだから、意気込みの裏返しだと思って聞き流したが、ピッチ上の11番、いや28番は中盤で必死に体を張り、チームのために汗をかいていた。

必死にサッカーに向き合い、残留争いする苦しいチームの中でもがいていた。確かに、ゴールチャンスは少なかった。もちろん狙ってはいたが「今日は決めないよ(笑い)」-。これはゴール以外でチームに貢献するという意気込みだったのか…。渋みを増し、これまで以上に格好良かった。

いい歳の取り方をしているなと思う。やんちゃだったが、その魅力と技術はそのままに、より一層献身的に。誰よりサッカーのうまい玉田が、走り回り、体を張るのだ。これは周囲への、これ以上ないメッセージに思えた。

節目の100得点まであと1点。リーチ。達成すれば、史上14人目で最年長での到達となる。

天才は達成しても、きっと「遅いって」と言うだろう。できれば今季中に達成し、節目の1点を来シーズンへの糧にしてもらいたい。年齢を重ねても、サッカーのうまさは変わらない。円熟味を増した姿で、それを証明し続けてもらいたい。【八反誠】

◆八反誠(はったん・まこと)1975年(昭50)生まれ。98年入社。06年からサッカー担当に。