全日本大学サッカー選手権の代替試合となる「アタリマエニ杯」で、神奈川県リーグの東海大が、決勝進出を果たした。2回戦でJリーグ内定者12人を擁する関東1部の王者・明大をPK戦の末に下し、準決勝では3人のJリーグ内定者がいる順大に1-0で競り勝った。

東海大は全選手がハードワークし、球際は激しくガツガツと相手に食らいつく。攻撃ではロングスローを多発し、ロングスローとセットプレーを軸に好機をつくっていく。敗れた順大の堀池巧監督は「コーナーキック、ロングスローでだいぶ、押し込まれてリズムがつかめなかった印象。ロングスローの対応は取り入れたが、しっかりはね返す、流れを切る作業ができず、相手を勢いづかせた」と振り返った。

東海大は、華麗なテクニックやパスワークで相手を崩すスタイルとは正反対。決して個の技術が高いとはいえないが、各選手の勝利への執着心、闘う姿勢の部分でチームとしての強さを感じた。明大、順大を破った力は偶然ではない。

ロングスローといえば、今年の全国高校サッカー選手権でも話題になった。メディアではロングスローの是非も飛び交った。東海大の今川正浩監督は、ロングスローの利点についてこう語った。「1つのスローイングで、ゴール前にシュートが入る可能性が高いエリアにボールを運べること。点を取るエリアにシンプルにボールを運ぶ方法。対応はとられやすいので簡単には点は取れないが、なんとか、(ゴール前で)混戦となって点が取れたらいいなという感じです」。

フィジカルコンタクトが強くなる大学、プロとなるとロングスローから得点するシーンは高校年代ほど多くない。だが、入らずとも、ロングスローを続けられれば、守る方は競り合いが多くなり体力も削られる。集中が切れた瞬間にゴールが生まれる可能性があるのだ。Jリーグでは、反町康治氏が指揮した松本山雅も戦術の1つとして使っていた時期があった。松本と対戦するチームは、ホームでは利を生かし、助走がとれないようにサイドラインの看板を前に出したり、試合前やハーフタイムに水をまき、ボールタオルをビショビショにぬらして“対策”したチームもあったと聞く。ロングスローは、相手の嫌がるところを突き、点を取って勝つための立派な戦法だと思う。

ロングスローとセットプレーで、神奈川県リーグ所属ながら全国の決勝舞台にまで勝ち上がってきた東海大。決勝は、技術も闘うメンタルも兼ね備えた法大だ。東海大が20年ぶりの優勝をつかみとるか。楽しみな対戦だ。【岩田千代巳】