今季のJリーグは26日、川崎F対横浜の一戦(等々力)で幕を開ける。注目は、昨季新人ながらベストイレブンを受賞し、20日の富士ゼロックス・スーパー杯でも2得点した川崎FのMF三笘薫(23)だ。1月の新体制発表会では、その三笘と引退した中村憲剛氏(40)が寸劇を披露した。

サプライヤー協賛する「オリヒカ」のクラブオフィシャルスーツ紹介コーナーで、営業実績ナンバーワン社員にふんした三笘が「僕なんて1年目から結果しか出していないですからね。結果出してください、結果!」と先輩役の中村氏をあおるというものだった。

クラブ事務所を使用したこの寸劇は、新体制発表会が無観客かつオンライン配信になったことを受けて企画された。スーツの紹介は毎年行っていたが、より注目してもらうために新しい要素を入れられないか? と企画されたもので、寸劇の脚本を担当した川崎Fタウンコミュニケーション部プロモーションリーダーの若松慧さん(32)は「1年目で活躍したルーキーがレジェンドをいじる姿は絶対におもしろい。遠慮なくやらせることを意識した」と話す。

スポンサー企業の紹介コーナーとあり、重視したのは「かっこいいスーツの見せ方」。若松さんは「スーツが似合い、見せ方がうまい方といえば、郷ひろみさん。脚本には『キレッキレの郷ひろみさん』と書いた」と着想を明かした。三笘が寸劇内で発した「ジャパ~ンを越えて、アジアを越えていくんだからね!」というセリフは、もちろんアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)での戦いを見据えたものだが、郷ひろみの楽曲「2億4千万の瞳」の歌詞にヒントを得たものだ。

前日に脚本とサンプル動画を受け取った三笘は、当日「みなさん(スタッフ)がやったほうがいいんじゃないですか」と苦笑していたという。ただ若松さんは「アカデミー育ちの彼は、クラブの活動理念、スポンサーや地域の協力でサッカーができていることを分かっている。プレーはクールなイメージがあるかもしれないが、(川崎F名物の)バナナをかぶって撮影に協力してくれたり、目的を伝えたら理解してやってくれることは知っていた」と話す。

実際、三笘は当日10回ほどリハーサルに臨み、入念に準備をしてくれたという。郷ひろみに負けない華麗なターンを決めるなど、体当たりの演技は反響を呼び、YouTubeには寸劇のモノマネ動画も上がっているほどだ。若松さんは「サッカーを知らない人にも知ってもらえる要素が生まれたのは大きなこと」と、ピッチ外でも話題をさらったことに胸を張る。

川崎Fでは過去の新体制発表会でも、FWレアンドロ・ダミアンが「マカ“ダミア”チョコレート」を手に「バーミヤン」のロゴの中から登場するなど、斬新な企画を打ち出してきた。若松さんは「地域やスポンサーのために、フロンターレらしくおもしろく伝えられるように、話題になることを提供できるように、と考えている。ありきたりな紹介では埋もれてしまい、注目されない」と、すべてに共通するクラブの一貫した考えがあると話す。

開幕戦では、あの寸劇の第2弾がお披露目されるという。川崎Fの心意気が詰まった寸劇を、記者も楽しみに等々力へ向かいたい。【川崎F担当=杉山理紗】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「サッカー現場発」)

川崎F・MF三笘(右)はスーツ姿で郷ひろみに負けないターンを決めた。左は中村憲剛氏(公式YouTubeより)
川崎F・MF三笘(右)はスーツ姿で郷ひろみに負けないターンを決めた。左は中村憲剛氏(公式YouTubeより)