<高校サッカー:市船橋2-1四日市中央工>◇9日◇決勝◇国立

 四日市中央工(三重)は市船橋(千葉)に延長戦の末、敗れた。躍進の象徴、1、2年生主体の若い力で意地を見せた。前半早々、2年生FW浅野拓磨が大会得点王に輝く7点目を決めた。通算6得点のMF田村翔太(2年)のゴール前の粘りから生まれた。樋口士郎監督(52)は現有戦力をベースにリベンジを誓い、再び単独優勝への挑戦がはじまる。

 20年ぶりの決勝(前回は両校優勝)で、初の単独優勝は逃したが、四日市中央工のキーマンは大いに暴れた。右CKからのチャンスを前半58秒で決めた。出場停止のMF国吉に代わりキャプテンマークを巻いたDF西脇が頭で競り勝ったこぼれ球を、MF田村翔がシュート。さらにこぼれたところをFW浅野が「決めるだけだった」と冷静に押し込んだ。樋口監督が「まず先制したい」と試合前日に話した先制弾で主導権を握った。

 その後も浅野、田村翔を中心に多彩な攻撃でゴールに迫った。最後は延長戦の末、市船橋の底力に屈した。だが樋口監督は「今をベースにしてハードワークできるようにしたい」。1、2年生主体(決勝先発1年2、2年6人)での結果に手応えをつかんでいた。

 91年度以来、優勝から遠ざかっていた。93年のJリーグ発足後、三重県内の有望選手は名古屋ユースや練習環境が整う他県の強豪校に流出し、選手集めに苦労していた。今回は、中学の県選抜経験者がそろっていた。ほとんどの2年生は、浅野から「四日市中央工で一緒に国立に行こう」と誘われ意気投合した仲間だった。若いながら、チームワークは抜群だった。

 発奮材料もあった。この日早朝、父智之さん(46)から携帯電話に昨年12月31日に生まれた妹心春(こはる)ちゃんの写真とともに「頑張れ」というメッセージ。さらに昨年12月には、7人きょうだいの長男将輝さん(20)にも子供が生まれ、おいができた浅野は気合十分だった。「7人きょうだいで7得点」の公約を実現した。

 2年生の得点王は02年度の国見FW平山(東京)以来、全6戦連発は76年度の首都圏開催以降4人目の記録だ。浅野は得点王に「たまたま」と控えめも、今後について「田村(翔)と切磋琢磨(せっさたくま)し、またストライカーとして戻ってきたい」と誓った。【菊川光一】

 ◆2年生得点王と全試合ゴール

 四日市中央工の2年生FW浅野が6試合連続の7得点で得点王に輝いた。2年生得点王は、首都圏開催となった76年度以降では、02年度の国見FW平山以来9大会ぶり13人目(1年生得点王は83年度の清水東FW武田修宏だけ)。過去の達成者にはJリーグでも活躍した黒崎(現新潟監督)松波(現G大阪コーチ)らがおり、現役では平山(現東京)柴崎(現川崎F)と日本代表経験者も。また、全6試合ゴールは、96年度の市船橋FW北嶋(現柏)、08年度の鹿児島城西FW大迫勇(現鹿島)、FW野村に次いで4人目。過去3人はいずれも3年生で2年生の全6試合ゴールは今大会の浅野が初めて。