全国高校サッカー選手権の決勝は今日13日、史上初の北信越ダービーとして東京・国立競技場で行われる。富山第一MF大塚翔主将(3年)は、2年前の富山大会決勝でゴールを外し、インターネット上で批判にさらされた。父が監督だからこそ味わった苦難に立ち向かってきた。

 決勝を前に、翔の脳裏には忘れられない出来事が浮かぶ。2年前の富山大会決勝。1年生ながら同点の後半途中出場し、1-2の同34分、ゴール前でフリーの大塚にパスが入る。だが右足シュートはポストに嫌われ、選手権出場を逃す。

 敗戦後、インターネットの掲示板では「監督の息子だから出たんだろう」「下手くそ」-。書き込みは30ページに及んだ。16歳の少年は心に深い傷を負い、母洋子さんに「サッカーやめようかな」と漏らした。大塚監督は「監督の息子じゃなければ、こんなことにはならなかったのに。申し訳ない」と話した。

 だが翔は、そんな父の姿から目を背けず、記憶に刻む。「自分のせいで苦しい思いをさせたくない」。練習の虫になった。毎朝、自宅近くの学校で、登校時間ギリギリまでシュート練習を続けた。2年からトップ下の定位置を実力でつかんだ。今季の新チーム発足時には、選手間投票で主将に選出され、チームの大黒柱となった。

 12日、仲間と最後の練習を終えた。運命の北陸対決を迎える。「どん底からここまで来られたのも、両親が支えてくれたおかげ。あれがなかったら今はないと思う。もう全力でやるだけ」と言った。もう、恥じる必要はない。父と越えてきた3年間の集大成に、翔は全力で挑む。【桑原亮】