プレーバック日刊スポーツ! 過去の1月15日付紙面を振り返ります。2011年の1面では、アジア杯1次リーグで日本代表MF本田圭佑のメモリアル弾で勝利しB組首位に立ったことを報じています。

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<アジア杯:日本2-1シリア>◇1次リーグ◇B組◇カタール

 日本代表MF本田圭佑(24=CSKAモスクワ)が「中東の笛」を吹き飛ばして、勝利を手にした。日本は13日(日本時間14日未明)、アジア杯1次リーグでシリアに2-1で勝利しB組首位に立った。本田はPKで日本国際Aマッチ1000得点目のメモリアル弾。GK川島が微妙な判定で退場になる苦境をエースが救った。

 金髪のエースが歓喜の叫びを響かせた。1-1で迎えた後半37分、FW岡崎が倒されて得たPK。俺が蹴る-。本田圭は強い意志を表すかのように手にしたボールを離さなかった。ボールをセットすると左足で豪快にゴール正面に決勝点を蹴りこんだ。「元祖もっている男」の一撃は、日本の国際Aマッチ1000得点目というメモリアル弾となり、苦闘を続けるザックジャパンを勝利に導いた。

 本田 (PKの場面は)ちょっと危なかったけど入ったので良かった。結果オーライです。蹴るのはヤットさん(遠藤)か僕かと思ったけど、ヤットさんは遠かったので1本目(のPK)はね。次はヤットさんに譲るんじゃないかな。

 これまで代表のPKはMF遠藤が蹴ることが多かった。その役者を押しのけての記念ゴール。主役の座を奪い取った。

 厳しい戦いだった。前半35分にMF長谷部のゴールで先制したものの、後半27分に副審がオフサイドと判定もイラン人主審が認めず、ペナルティーエリア内で相手選手と接触したGK川島が「ゴール機会阻止」とみなされ一発退場。PKを決められ、数的不利な状況で同点に追いつかれた。「中東の笛」ととれる苦境下で本田圭がPKの一振りでチームを救ってみせた。

 「前線のポジションチェンジを増やしていきたい」。ヨルダン戦翌日の10日に話していた言葉を体現した。序盤から前後左右に幅広く動き、空いたトップ下のポジションに香川や松井が飛び込むことで、攻撃面で流動的な連係がつくられた。前半35分の先制点も、本田圭が右サイドに流れ、空いた中央のスペースに走り込んだ香川にパスを通したことがきっかけとなった。

 一見すると目立たない「黒子」のスペースをつくる動きが、ザッケローニ監督が話す「プレースピードのアップ」につながった。本田圭がつくったスペースに鋭く周囲の選手が走り込み、好機を演出した。17日のサウジアラビア戦、さらにはその後の決勝トーナメントを見すえると、本田圭の「黒子の動き」がザックジャパン進化の鍵となる。

 シリア戦は試合中に接触プレーで唇を切り流血。左足首もねんざし、一夜明けた14日の練習を回避して宿舎で療養に努めた。

 本田 次も勝たないと。シリア、ヨルダンよりサウジの方が強い。接戦になっても競り勝ちたい。ありきたりだけど、チーム一丸になって勝ちたい。

 流れの中では「黒子」で、PKでは「先輩」をさしおいて節目のゴールを奪った。日本のエースが光となり陰となり、チームをアジア制覇へと導いていく。

※記録と表記は当時のもの