サッカーのJリーグ初代チェアマンや日本協会(JFA)会長を歴任した川淵三郎氏(84)が、東京五輪・パラリンピック組織委員会の新会長に就く。11日、女性を巡る発言で辞意を固めた森喜朗会長(83)と都内で会談。後任に推され、正式に就任要請された際は受諾する返答をした。

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3年半前。偶然にも私の49歳の誕生日に川淵さんをインタビューした。健康法に関する取材が一通り終わり、続く雑談タイム。川淵さんが、96年から取材している私に聞いてきた。

川淵さん 長いね。いくつなの?

私 ちょうど今日が49歳の誕生日です。

川淵さん (しばらく考えて)そうか。何かあげたいな。ちょっと待って。

川淵さんは、胸ポケットから筆ペンを取り出し、色紙に一筆書いてくれた。

「盧載鎭さん 何のために生きているのか ヴィジョンは何か 2017・9・8 川淵三郎」

達筆に感動し、言葉の意味を聞いた。

川淵さん オレは、40代まではわがままで自分と家族のことだけを考えて生きていた。でも少しずつ考えが変わって、50歳からは他人のため、オレが属しているこの社会、コミュニティー、国のために生きることにして、今までその気持ちで1日1日生きている。自分が得たものを社会にどう還元していくかも考えながらね。そう思うと、毎日が楽しいぞ。多くのものを返していきたいから、健康にも気を使うしね。君も来年には50歳になるわけだから、何のために生きるべきか、ビジョンを持って生きてほしいから、そう書いたよ。まだ1年あるから、今後のビジョンをゆっくり考えてみてね。

コロナ禍に加え、前任者の失言で、世論調査では東京五輪・パラリンピックの開催に否定的な意見が多い。開催までは順風満帆な道のりではないことは十分ご存じのはず。場合によっては、今まで築き上げたものが、一瞬にして崩れることもあるだろう。それでも川淵さんは、その大役を引き受けるだろう。大会成功こそが、日本への恩返しと思っているはずだから。【盧載鎭】