東京五輪決勝の舞台で、女子日本代表「なでしこジャパン」(FIFAランク10位)のMF長谷川唯(24=ACミラン)が、圧巻のプレーで攻撃をけん引した。7-0と快勝したパナマ代表(同59位)戦。得意のドリブルやスルーパスで何度もチャンスを作り、ループシュートで得点も決めた。チーム事情で合流が遅れ、8日のパラグアイ戦には出場できなかったが、目に見える違いを見せつけた。

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ミラノ帰りのファンタジスタが、なでしこジャパンの攻撃を変えた。長谷川は自在にポジションをとりながら、遊び心あるプレーで好機を生み、何より観客を魅了した。前半32分には、近距離からの絶妙なループシュートを決めた。数字の上では1ゴールだが「ドリブルからのスルーパスなど、得意なプレーが出せて良かった」と5得点に絡み、90分間で自らの価値を証明してみせた。

1試合のためにイタリアから戻ってきた。クラブ事情で帰国が遅れ、チームに合流したのは10日の前日練習からだった。それでも長くプレーしてきた選手との連携に問題はなく、長谷川は「日本人的な考え方の部分で(周りと)合うなと、海外に行ってあらためて思えた」。ハットトリックのFW菅沢も「(長谷川は)FWにボールが入ったときの距離感がよかった。ワンタッチでつないだり、タメを作ってくれて、前に関わる人数が増えた」と振り返った。

新型コロナが再流行しているミラノでは、自宅から練習場とスーパーを往復する毎日。言葉の壁にぶつかったり、日本では奨励される自主練習を制限されたりと苦労もあるが、体格の異なる相手と試合を重ねて「向こうはフィジカルコンタクトが多い。今日はそういう場面は少なかったけど、これからに生かしたい」と、世界の強豪と戦うイメージを深めている。

7月21日の五輪サッカー女子初戦まであと12日で100日。決勝戦が行われる国立でプレーした長谷川は、「こういう良いスタジアムでできるのは貴重な時間だった。決勝まで行けたらこの舞台でまた試合ができる」と、金メダルという目標を再確認した。【杉山理紗】

◆長谷川唯(はせがわ・ゆい)1997年(平9)1月29日、埼玉県戸田市生まれ。中学1年時に日テレ・メニーナに加入。14年U-17W杯コスタリカ大会優勝。13年に日テレ・ベレーザでトップチームデビュー、17年3月のアルガルベ杯でA代表デビュー。19年女子W杯フランス大会代表。今年1月にACミランへ移籍。157センチ、47キロ。

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