サッカーのワールドカップ(W杯)カタール大会のアジア最終予選で、日本は早くも2敗を喫し、7大会連続の本大会出場に黄信号がともっている。日刊スポーツのサッカー担当記者らが掘り下げるコラム「Nikkan eye」では、「日本代表の矜持」について考える。

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思い出される光景がある。2013年3月26日、W杯アジア最終予選ヨルダン戦。東はサウジアラビアと面し、西には死海がある国で、日本は異様な雰囲気の中で戦った。2点をリードされ、FW香川真司のゴールで1点を返した直後の後半26分。同点を狙ったMF遠藤保仁のPKは、GKに阻まれた。客席から緑色のレーザー光線が浴びせられ、視界が遮られていた。

1-2で敗れた試合後のこと。執拗(しつよう)に香川にユニホーム交換を求めたヨルダンの選手が、左胸にある日の丸を示しながら、首を切るポーズを繰り返した。試合中から日本ベンチにも同様の挑発をしており、当時のザッケローニ監督が激怒。顔を真っ赤にして猛抗議した。現地で取材をしたが、今にも手を出すのではないかと思うほどの勢いだった。

思えば、日本代表を率いたジーコ監督もそうだった。礼を欠く相手に、感情をあらわにしていた記憶がある。W杯予選とは国の威信をかけた戦い。なめられてはいけない-。日本代表としての矜持(きょうじ)を、外国人監督が先頭に立って示してきたのである。

その光景と、今回の光景はあまりにも違った。0-1で敗れた7日(日本時間8日)の最終予選サウジアラビア戦(アウェー)。興奮したサウジ側のサポーターが日本を挑発し、差別的なジェスチャーもあったという。それを見たDF吉田が怒り、客席まで詰め寄った。すぐ側にいた森保監督は、敗戦のショックもあったのだろうか。自らが率いるチームが侮辱されても、ただそれを眺めていただけだった。

11年前、就任会見でのザッケローニ監督の言葉は印象的だった。

「代表のユニホームを着れば、国の象徴となる。私はサムライという言葉が好きだ。完全に日本人の気持ちにならないといけない」

確かに、イタリア人監督は侍になろうとしていた。

もしかすると、森保監督は公の場ではあえて冷静な姿を見せているだけかも知れない。広島を率いた頃、ハーフタイムのロッカー室で激しい口調で選手を鼓舞する映像を見たことがある。ただ、感情をむき出しにて戦う姿こそが今、苦境にあえぐ日本には必要ではないか。【元日本代表担当=益子浩一】