【デュッセルドルフ(ドイツ)27日=岡崎悠利】サッカー日本代表の森保一監督(54)が、11月のW杯カタール大会を見据えた“妙手”を打った。

23日の米国戦後、主力のDF冨安健洋(23)を所属のアーセナルに戻した。本大会前の最後の活動で、エクアドル戦も残した段階での決断。本大会で冨安がベストな状態を作るための布石になる。

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W杯を見据えて森保監督が布石を打った。23日の米国戦を終えて、DF冨安の離脱が決定。理由は負傷ではなく「クラブ事情」だった。国際Aマッチ期間では、日本協会は選手を拘束する権利がある。27日のエクアドル戦でさらにチームを洗練させる課程だったが、冨安をアーセナルに帰した。

負傷も少なくない冨安は、戦力として計算したいアーセナルも注意をはらう。日本協会とクラブはこれまでも綿密な連係をとってきた。国内で行った6月の活動では、コンディションが万全でない状態だったが招集。練習時は別メニューで、コーチがつきっきりで状態改善に努めた。その様子を動画に収め、毎日アーセナルに報告。手を取り合って冨安をサポートした。日本協会の反町技術委員長は「互いにコミュニケーションを取ることで、彼もいい形でプレーできていると思っている」と話す。

米国戦では冨安をセンターバックだけでなく、代表では初めて右サイドバックでも起用。終盤には3バックも試し、1試合で必要な確認をすべて行った。エクアドル戦ではローテーションのテストで先発全員を入れ替える構想もあり、冨安を早めにクラブに帰すことになってもいい手はずを整えていた。

選手のキャリアを大切にし、クラブでの活躍の延長線上に日本代表があるというのが森保監督の考え方。アーセナルに移籍する際には日本代表の活動を免除。そうした判断が、プレミアリーグでしのぎをけずりたくましさを増す冨安の現在につながっている。クラブとも信頼関係を築き、選手にはW杯で万全の状態を作ってもらう。これも監督としてのチームマネジメントになる。