静岡県伊東市が、W杯ブラジル大会で日本代表のベースキャンプ地となるサンパウロ州イトゥ市とタッグを組み、地球の真裏と同時刻にW杯の温泉パブリックビューイング(PV)を計画している。名前が似ている縁から、両市は交流を開始している。双方の町の名物「温泉」を生かし、在日・日系ブラジル人に応援を呼び掛ける。16年リオ五輪、20年東京五輪を視野に、姉妹都市としての提携も計画している。

 ITOとITUがつながる。伊東市は観光協会を通じ、市内のホテルや旅館にW杯期間中は試合の放送を呼び掛ける。ロビーやサウナのテレビをすべて中継チャンネルに切り替える。日本人移住者や、トヨタやホンダ、味の素など日本企業が多いイトゥにもスパ施設が多数あり、伊東市議会副議長の佐々木清氏(60)は「イトゥにも呼び掛けたい。お互いスパリゾートなので、温泉で癒やされながらサッカーを楽しんでほしい」と、地球の裏側との同時PVを提案。浜松市などに多く住む在日・日系ブラジル人も誘い、ブラジル代表の応援の場も提供する。

 すでにパイプはできている。昨年12月に日本代表の合宿地がイトゥに決まった際、ネットに「代表のホテルはハトヤ(伊東市の有名ホテル)らしいぞ」などという書き込みがあったことから、市サッカー協会や観光協会が交流を提案した。

 今月9日にはサンパウロの日系人向け日刊紙、ニッケイ新聞の高木ラウル社長(68)が伊東市役所を訪れ、イトゥのアントニオ・ゴメス市長の親書を伊東の石井勇副市長に渡した。日本代表が現地入りする6月には、伊東の子供たちの応援メッセージを贈る予定だ。

 今回のW杯に限らず、2年後のリオ五輪、6年後の東京五輪にも目を向ける。ブラジルのコーヒー農家が緑茶栽培に興味を持っているという情報があり、佐々木氏は「静岡の緑茶栽培を伝授し、リオ五輪で選手が緑茶を飲みやすい環境が整っていたらいい」。また、隣の伊豆市に国際基準の自転車競技施設・伊豆ベロドロームがある利点を生かし、東京五輪では合宿地としてブラジル代表を招待する案も明かした。

 「日本代表には天国のイトゥキャンプになるように応援したい。両国の関係深化に貢献していきたい」と佐々木氏。まずは裸の付き合いで絆を深める。【由本裕貴】

 ◆同じ名前で町おこし

 米国オバマ大統領が誕生した08年、福井県小浜市(おばまし)の市民有志が「オバマを勝手に応援する会」を立ち上げ、Tシャツやストラップ、和菓子などの商品をプロデュース。ハワイ出身のオバマ氏にちなんでフラダンスチームも結成した。また、ソチ五輪が開催された今年2月には、新潟県柏崎市曽地(そち)の町内会が地元の少年少女による運動会「曽地五輪」を実施。