<アジアCL:(5)G大阪2-0アデレード(オーストラリア)(0)>◇決勝第2戦◇12日◇アデレード※カッコ内は2戦合計得点

 【アデレード(オーストラリア)12日=北村泰彦】G大阪が悲願のアジア王座をつかんだ。アデレードとの第2戦も2-0で完勝。2戦合計5-0とし、2度目の出場で初優勝を飾った。12戦無敗(アウェー全勝)で、昨年の浦和に続く日本勢2連覇も達成。12月のクラブW杯の出場権を獲得し、初戦に勝てば欧州王者マンチェスターUと激突する。西野朗監督(53)は就任8年目の来季限りでの勇退が既定路線。14年W杯ブラジル大会の日本代表監督という野望へ、次は世界を相手に実績を重ねにいく。

 歓喜の胴上げで3度宙に舞った。西野監督はアジア王者の味をかみしめた。「うれしいの一言ですね…。勝ちきって優勝することに意義があると思っていた。昨年、ライバルの浦和に先にアジア王座をとられた。今年はガンバがという思いがあった」。最後まで攻め抜いて、相手の戦意を喪失させた。大会史上初のアウェー全勝優勝。常識破りの攻撃で頂点へ上り詰めた。

 攻めの采配がまた的中した。第1戦で3点を奪っても、守りに入らず切り札の佐々木を先発させる4-5-1で臨んだ。前半4分、その佐々木のシュートのこぼれ球をFWルーカスが押し込み先制した。同14分にも二川のパスからルーカスが2点目。この時点で勝負は決した。華麗なパスサッカーで、アデレードのドッド主将に「まるで15人を相手にしているみたい」と言わしめた。

 泥沼からはい上がってきての優勝だ。7月21日、西野監督の怒声がクラブハウスに響いた。「何だよ、それ!

 認められるわけがないだろ!」。FWバレーがアル・アリ(UAE)への移籍に向けた最終交渉をG大阪と行っていた。寝耳に水の事態に、同監督は激怒した。結局はエース不在という事実だけが残った。

 チームは極度の不振に陥った。7月26日大分戦から、クラブワーストの公式戦10試合白星なし。9月17日ACL準々決勝アルカラマ戦の白星で再び上昇気流に乗った。選手と自らの手腕を信じ、組織で現状を打破した。「JリーグよりACLの方がステータスが上でなければいけない」。執念が実った。

 今季がJ史上最長政権となる7年目だった。昨オフに2年契約を打診され、「長すぎるのもよくない」と悩み抜いた末に下した続投で、来季後の勇退が既定路線だ。その先にあるのは、14年W杯ブラジル大会での日本代表監督だ。12年前のアトランタ五輪でブラジルを破る「マイアミの奇跡」を演じたが、当時は日本協会から守備重視と批判された。屈辱が反骨心となり、自らを支えてきた。

 待望のクラブW杯出場権を得た。「1つ勝って、とにかくマンチェスターUとやりたい。がっぷり四つでやりたい」。相手が強ければ強いほど燃えるのが西野朗という男。完全無欠でアジアを制したG大阪は、日本屈指の指揮官のもとで世界への扉を開く。【北村泰彦】