全国高校総体との「夏冬2冠」を狙う東福岡が1-0で駒大高(東京B)を下し、連覇した98年度大会以来の4強に進んだ。新チームの成長を象徴するMF橋本和征(3年)が後半22分にヘッドで値千金の決勝弾。Jリーグ内定者は0で、コーチから「史上最弱」とも評された悔しさをバネにはい上がってきた。9日の埼玉スタジアムでの準決勝は昨年覇者の星稜(石川)と対戦。泥臭く3度目の優勝を狙う。

 東福岡の反骨心の象徴とも言えるMF橋本が千金弾をぶち込んだ。後半22分、右サイドのクロスをGKがはじき、浮いたこぼれ球に詰めた橋本がヘディングで押し込んだ。「4強は優勝を狙う通過点だが、単純にうれしい」。混戦から奪い取った泥臭いゴールに声を弾ませた。

 千葉で行われた市船橋(千葉)との3回戦に続き、地元の大声援を受けた駒大高を向こうに回す完全アウェー戦。序盤からロングボールを多用する速攻に苦しめられた。だが後半早々の選手交代後、橋本が得意のトップ下から左サイドに回ると、両サイドを生かすヒガシ伝統の攻撃が活性化。森重監督が「最後はもう気力だけ。足が動いていなかった。勝てたのは生徒の気持ちでしょう」と話す執念が、勝利につながった。

 岡山出身の橋本は進学の際、地元の強豪・作陽にも誘われた。ただ、自分が生まれた97年度の大会で優勝に貢献した本山(J2北九州)らにあこがれ、「練習環境が整いレベルが高かったから」とサッカー留学した。しかし、近年の東福岡は選手権8強が最高で、前回大会も優勝候補筆頭と呼ばれながら3回戦敗退。さらに昨年はプレミアリーグ西地区でC大阪ユースに1-6で完敗するなど新チームから結果が出ず、コーチから「史上最弱」と評されてきた。

 それだけに全員に危機感があった。MF三宅は「戦術のことなど歴代最多ぐらい監督とガチで話しました」。橋本も意見したことがあるが、森重監督に「自分を出すのは大事だが、チームを優先しないといけない」とガツンと食らった。「自分がわがままになってはいけないと気づかせてくれた。『史上最弱』と言われ、悔しい思いでやってきた」と振り返った。1回戦から4戦目。疲労の蓄積がある中、勝ちを拾ったチームの原動力は反骨心だった。

 MF中村主将は「全国のトップレベルの力があっても勝てない。どうしたら勝てるのかと、チーム力を磨いてきた」とこの1年の道程を思い起こした。昨夏の全国高校総体との「2冠」まであと2勝。星稜との準決勝に向けて、士気はさらに高まっている。【菊川光一】