攻撃的GKの活躍で優勝候補が快勝発進した。青森山田が鵬翔(宮崎)を5-0で下した。東京に加入するGK広末陸(3年)がゴールキックで2点目を演出するなど、攻守で貢献した。昨年12月に高校世代NO・1を決める高円宮杯U-18チャンピオンシップを初制覇し、広末はMVPを獲得。俳優の東出昌大似のルックスで、キックは最高飛距離73メートルを誇る。人気と実力を備えた世代屈指のGKが初優勝へ前進した。

 一直線の低い弾道にスタジアムがざわめいた。1-0の前半23分のゴールキック。青森山田GK広末が自陣ゴールエリアで右足を振り抜くと「ドン!」という音が響いた。ボールはハーフウエーラインをあっという間に越え、敵陣ペナルティーエリア付近へ。いったん頭で落とした鳴海が、再びパスを受けて左足でゴールへ流し込んだ。相手の守備を打ち砕いたキック。広末は「個の特徴が出せた」と推定飛距離70メートルの1発に胸を張った。

 「最高飛距離は多分73メートルくらい」とパワフルな上、精度も正確。憧れのドイツ代表ノイアーや日本代表の西川のように、「ピンポイントでキックします」。風向きや味方の位置を見極め、胸元や足元とコースを蹴り分ける。もともとキック力に自信があったが、「腰まで雪に埋まる」と青森山田恒例の雪中サッカーで足腰の強さに磨きがかかった。

 広末は守護神ながら攻撃の柱で、正確なフィードを黒田監督は「攻撃の起点になるし、相手にとって脅威」と評価する。高円宮杯U-18プレミアリーグ東地区などでも何度も得点の起点となり、U-19日本代表にも選出。受け手の鳴海は「広末のキックは飛ぶし、全国で通用する。自分のヘディングと広末のキックがあれば攻撃が成立する」と連係に自信を見せた。

 ファンの心も射抜く。似ている芸能人を聞かれ、「よく言われます」と照れながら答えるのは、俳優の東出昌大。「髪形とか顔のパーツの距離とかが似ているんだと思います」。眉毛もそったことがないものの、顔立ちは端正で、かつプレーは豪快とあって、黄色い声援を浴びることも多い。

 先月は高円宮杯U-18を制し、Jリーグのユースを含めたこの世代の頂点に立ったばかり。それでも、目標は「高校に入った時からこの大会で優勝すること」。世代最強GKの目標は揺らいでいない。【島根純】

 ◆広末陸(ひろすえ・りく)1998年(平10)7月6日生まれ、東京・足立区出身。小学時代はFWで中北SCに所属しながら、J1東京スクールの選抜クラスでプレー。東京U-15深川からGKに転向するも「身長が足りなかった」と同ユースに昇格できず青森山田へ進学。選手権には3年連続で出場。趣味は釣りで「魚をさばくのは得意」。家族は両親、兄、弟。184センチ、78キロ。血液型O。