横浜F・マリノスが今季2度目の“俊輔ダービー”を制し、2大会連続の4強入りを決めた。後半36分、右サイドからラッキーボーイのMF遠藤渓太(19)が入れたクロスは、相手のオウンゴールを誘って先制。21日のリーグ戦でも、首位鹿島アントラーズから決勝点を奪った勢いを持ち込んだ。MF中村俊擁するジュビロ磐田との対戦は4月のリーグ戦に続いて勝利。天皇杯最多タイとなる8度目の優勝へあと2勝とした。柏レイソル、セレッソ大阪、ヴィッセル神戸も準決勝に進んだ。

 何かが起きる期待感が、ホームの会場に充満していた。後半36分、カウンターから右サイドで遠藤が受ける。次の瞬間、敵味方入り乱れるゴール前に、グラウンダーの鋭いクロスを放った。雨でぬれたピッチにGKら相手選手が交錯。オウンゴールとなった。J1最少30戦28失点で並ぶ、堅守同士の対決は最少得点で決着。遠藤は「トリッキーなボールを入れたから相手も混乱したと思う」と4強進出、さらに史上最多Vに近づく決勝点に胸を張った。

 21日の鹿島戦では同点から3-2の勝利に導く決勝点を挙げたが、実はこの得点も当初は「オウンゴール」と発表された。この日と同様、最後は相手がゴールに押し込んだ。それを試合前に中村俊から「あれはオウンゴールだから」と冗談ぽく指摘された。その言葉に肩の力が抜け、この日の“得点”につながった。

 4月約半年前の今季初対決に際し、磐田名波監督が「俊輔ダービー」と名付けた中村俊の新旧所属先の対決。前回対戦では、遠藤は終盤から途中出場も見せ場はなかった。その後、U-20W杯(韓国)に出場したが、帰国後は出番に恵まれず。そんな中、故障者続出から出番を得るとリーグ戦直近3戦で2度決勝点。勢いを天皇杯にも持ち込んだ。

 前半44分、中村俊が放った約30メートル強烈ミドルシュートのFKで「やっぱりうまかった」と、目が覚めるきっかけとなった。中3日の29日にはリーグ戦で再び磐田と対戦。「次はしっかりと、自分のゴールでチームを勝たせられれば」。ラッキーボーイだけで終わらせるつもりはない。【高田文太】