日本(世界ランク9位)が開幕戦でイングランド(同12位)を2-1で破った。エース黒田智成(39)が鋭いドリブルとキープ力で先制、決勝の2ゴール。国際視覚障害者スポーツ連盟公認の国際大会で好スタートを切った。

 みぞれの悪天候。人工芝のピッチは気温2・5度まで冷え込んだ。ボールが滑り、止まる。そんなコンディションの中、黒田が輝きを放った。前半14分。右フェンス際でルーズボールを拾うとドリブルで一気にゴール正面に切れ込んだ。左足を振り抜くと、シュートは相手選手の股間を抜けてゴール右隅へ。この2分後に失点したが、今度は後半11分だった。

 中盤で激しいチェックを仕掛けて相手ボールを奪う。拾った主将の川村怜(29)が中央を持ち上がると、右サイドに開いてパスをもらった。ドリブルでゴールへ突進する。大柄な相手3選手に進路をふさがれるとボールを止め、フェイントを入れながら円を描くように体をターンさせて右足シュート。角度のついたボールは再び相手選手の股間から左ポストに当たってネットを揺らした。

 「みんなが体を張ってゴールを守り、ボールを前線に送ってくれていたので、チャンスがあったら思い切って狙おうと思っていました。1点目は思い切り蹴りました。2点目は冷静に相手をかわしてミートできました」。黒田はチーム全体で奪ったゴールであることを強調し、冷静にそのシーンを振り返った。

 昨年12月のアジア選手権。日本は3位以上に与えられる世界選手権出場権を目指したが、5位に沈んだ。黒田は3試合で1得点。エースの不調がそのまま成績に表れた。20年東京パラリンピックに開催国枠で初出場が決まっている。今年6月にマドリードで開催される世界選手権は絶好の強化の機会になるはずだった。責任を一身に背負い込んだ黒田だが、東京へ機運を盛り上げる今大会の開催が決まったことで気持ちを切り替えられた。「世界トップのチームと真剣勝負ができる機会はそう多くないので、日本がもっともっと強くなる上で重要な大会だと思っています」。

 全員が積極的に前へ出て、攻撃的な守備からチャンスをつくる-。高田敏志監督(50)のもと、日本は攻撃型チームへの脱皮を目指している。その中心になるのが黒田だ。「期するものがあったと思う。彼のプレーを相手が嫌がることは分かっていた。本当に練習通り冷静にやってくれた。普段はもの静かだが、ピッチでは熱い男なんです」と指揮官もエースの復調に手応えを感じていた。