日本代表の西野朗(あきら)新監督(63)が14日、就任後初視察を行った。セレッソ大阪-FC東京戦(ヤンマー)を訪れ、常連組、候補組の状態を確認。負傷から復帰したC大阪MF清武、東京の16歳FW久保の途中出場も見届けたが、個別評価は避けた。試合はC大阪が1-0で勝利。偶然にも、監督を務めた96年アトランタ五輪で起こした「マイアミの奇跡」のように、DFとGKの連係ミスから決勝点が生まれる展開になった。

 慎重な西野監督は初の視察も穏やかに終えた。選手の評価について「今は1人1人に対するコメントは控えたい」と話すにとどめ、連戦の中で我慢比べとなった試合を「タイトな日程の中で、両チームとも選手をやりくりした中で、中盤は相手に主導権を握らせない攻防を見せてくれた」と評価。「ゴール前のアタック&ディフェンスは激しくなかったが、それでも、選手をチェックしないといけない」と正確な状態把握の難しさを感じたようだった。

 その中で、ちょっぴり22年前と似た景色が見えた。後半29分、C大阪の浮き球パスを東京DFチャンとGK林がお見合い。C大阪FW高木がボールをさらい、がら空きのゴールに蹴り込んだ。「マイアミの奇跡」はブラジルのDFアウダイールとGKジダがロングボール対応で衝突。こぼれ球をMF伊東が無人のゴールに決めている。力関係、状況は当然ながら同じではないが、連係ミスからの決勝点。偶然とはいえ、最終的なスコアも1-0だった。

 慌ただしかった。7日にハリルホジッチ監督が解任され、9日付で就任。11日のリーグ戦は会見前で視察を見送っていた。ようやくの初仕事。自ら愛車を運転してキックオフ30分前に会場入り。兼任コーチとして入閣させた東京オリンピック(五輪)代表の森保監督と合流した。白シャツ1枚に、試合が始まるとダンディーに眼鏡をかけた。お目当て? の負傷明けのC大阪MF清武は途中出場。ロスタイムに惜しい右足シュートを放ったが、この時は既に取材を受けていて見逃した。ただ、東京の16歳FW久保ら出場選手全員のプレーは見届けた。

 選考基準については「システムにもよる。選手と戦術、戦略を合わせながら見ていきたい」と発言。採用する陣形に合わせて選ぶ可能性があることを、新たに示した。ワールドカップ(W杯)メンバー発表は来月に迫っている。国内外を行脚するしかない中で、いきなり今日15日は視察を見送ったが「全部、映像で」と強調。J1の4試合をアキラ監督は100%チェックする。【木下淳】

 ◆マイアミの奇跡 96年アトランタ五輪の初戦はフロリダ州マイアミで行われ、西野監督率いる日本がブラジルに1-0で勝利。日本は後半27分、MF路木が前線にハイボールを送り、FW城がゴールに迫ったところで、GKジダとDFアウダイールが交錯。こぼれ球をMF伊東が押し込み先制した。日本は28本のシュートを打たれたが、GK川口を中心にこの1点を守り抜いた。