史上初めて実現した「平和祈念マッチ」は首位サンフレッチェ広島がV・ファーレン長崎に貫禄勝ちした。ともに被爆地に本拠を置くクラブ同士の初対決は、広島が敵地で2-0の完勝。前節に今季初黒星を喫したが再び首位固めに成功し、4連勝でストップした長崎とともに全力プレーで平和のメッセージを世界に発信した。

 広島が「平和祈念マッチ」と銘打たれた歴史的な一戦を制した。開幕11試合で早くも9勝目を挙げ、首位固めに成功した城福監督は「我々がやれることはフェアな質の高いプレー。勝利へ向かう、ひたむきさを感じてもらう試合にしたかった」と胸を張った。

 途中出場のFWティーラシンが後半7分、右足で待望の先制点を奪った。4試合ぶり今季3点目に、29歳のタイ代表は「広島と長崎は同じ経験をしてしまったが、恐れず立ち上がる姿勢を見せてきた。今日は大事な試合だった」と感無量の表情だ。

 1945年(昭20)8月6日に広島に、9日には長崎に原爆が落とされた。あれから73年、長崎が今季J1初昇格を決めたことで両クラブの対戦が実現。この日は長崎での開催だったが「スポーツができる平和に感謝し、スポーツで皆さんに幸せを感じてほしい」(広島山本社長)という思いで勝利を目指した。

 試合前は千羽鶴を折る会場が設けられ、選手やサポーターらも約1000個の風船を青空へ放った。8月11日、今度は広島で再び対戦する。両クラブが先頭に立ち、世界へ平和のメッセージを発信する。【菊川光一】