ベガルタ仙台は、湘南ベルマーレとのプレーオフステージ第2戦を3-1で勝利したが、2試合計3-4で敗れ、ノックアウトステージ進出を逃した。

 第1戦を0-3で落としていたため、4点以上無失点が突破への最低条件となっていたが、2-0で折り返した後半にアウェーゴールを奪われ突き放された。2年連続ベスト4進出こそ逃したが、立ち上がりからベガルタの「究極の理想」のサッカーを披露し、集まった1万215人を納得させた。

 無失点でゴールを挙げるしかない極限状態の中で、渡辺晋監督(44)が目指す究極のサッカーを、仙台イレブンが体現してみせた。

 渡辺監督 思い切って攻撃に厚みをもたらすことができ理想型に近い形を披露できた。理想を言えば90分敵陣でプレーしたいが、実際に通常のゲームでどれぐらいやれるのか整理してトライしていきたい。

 渡辺監督の「究極の理想」とは「90分間相手のハーフコートで試合をすること」。立ち上がりから、それは展開された。最終ラインの両サイド、DF平岡康裕(32)、金正也(30)がオーバーラップから何度も敵陣深くまで進入し、クロスを放ってチャンスメークする。自陣にGK関憲太郎(32)のみを残し、フィールドプレーヤー10人がアタッキングサイドに駆け上がった。

 前半21分、その平岡がMF野津田岳人(24)のCKをニアからヘッドで流し込み先制。「早い時間に点を取って勢いに乗せたかった」と移籍後初ゴールで先制すると35分には、FW石原直樹(33)の縦パスにFW西村拓真(21)が、右足で2点目を押し込んだ。後半にアウェーゴールを許したが、勢いは止まらない。サポーターの大声援に乗って、MF奥埜博亮(28)が右45度の枠外からスーパーミドルを突き刺し、最後までゴールへ向かった。

 放ったシュートは湘南の4本に対して18本。ベスト4進出こそ逃したが、ベガルタが目指す「究極の理想」を90分間目の当たりにしたサポーターからは、コールが鳴りやまなかった。渡辺監督は「ロッカーで悔し涙を流している選手もいたが、これを忘れずにエネルギーに変えて次に進めれば、我々が今日90分の中でやれたことを自信にできれば、残りの後半戦では素晴らしいベガルタ仙台というチームを披露できると思っています」と手応えを口にした。【下田雄一】