トラップした瞬間、鹿島アントラーズの19歳には年齢に似合わぬ冷静さがあった。「アドリブですけど、いいトラップが決まったのでGKを見てから打とうと、ギリギリまで見ました」。左足で軽く浮かしたチップキック。1-1で迎えた後半24分、MF安部裕葵が1度は勝ち越しとなる今季初得点を奪った。

 ワールドカップ(W杯)期間中はロシアにいた。U-19代表として日本代表の練習相手を務めに。そこではA代表に入ってプレーする機会ももらった。「世界で戦っている人たちは背中がすごく格好良く見えた。4年後、自分もそうなりたいと強く思った」。

 1点を追う前半34分には自らの判断で最初の左から右に位置を移り、クロスをFW鈴木の頭に合わせた。それがMF遠藤の同点弾を呼び込んだ。「あの時間帯はなかなかクロスが入っていなかったので、何か変えないとと思っていた」。頼もしく流れを引き寄せた。

 結果は最後に追いつき3-3。昨季最終節で優勝を逃した敵地で勝てなかった。ただ、3得点は今季最多。安部が活力になった。

 W杯の観客席では、選手と一緒に泣き叫ぶ他国のサポーターを見た。「自分が思っているより、このスポーツはもっと偉大なモノだった。すてきなスポーツだと思いました」。感動させられる立場にいると自覚した19歳は、一皮むけた。【今村健人】