アビスパ福岡FW城後寿(32)が、FC町田ゼルビア戦で先制弾を決めたが、まさかの逆転負けを喫した試合後、温かい声援を送ったサポーターに「思いに応えたい。何とかJ1昇格という目標を成し遂げられれば」と誓った。

城後は前半24分、右サイドに抜け出したFWドゥドゥのクロスに飛び込むも、シュートはわずかに枠を外した。「ドゥドゥからのいいボールが来て、振りすぎてファーにいった」。

その反省を後半25分に生かした。城後はMF輪湖直輝の左クロスに飛び込むと、DFの頭1つ上から打点の高いヘッドでたたき込んだ。「逆らわず、ニアに打てたのが良かった」。全体練習後、輪湖らにクロスボールを上げてもらい、練習に付き合ってもらっているという。「試合に出たということで、練習をやって来て良かった、裏切らないなと感じることが出来た。輪湖の左足はチームの武器になるし、僕の特徴も出せるボールを入れてくれる。合わせれば相手の脅威になると思う」と手応えを口にした。

ところが、その後、局面で体を張り、ゴール前に長いボールを入れてくる町田の攻撃に苦しみ後半29、35分に連続失点した。城後は「相手がロングボールを、いいところに入れてくるのは分かっていたが、ラインがズルズル下がりすぎた。失地挽回ではないけれど、こっちもロングボールを使って相手の裏を突ければ良かったが、あまりに下がりすぎて、蹴ることが出来なかった。うまくやられてしまった」と唇をかんだ。

負けたことで勝ち点は66にとどまった。今季、残りは2試合で、この日、東京ヴェルディに勝って勝ち点73で首位に立った松本山雅FCとの勝ち点差が7となり、2試合を残し優勝の可能性がなくなった。さらに横浜FCに敗れ、首位から自動昇格圏の2位に転落した大分トリニータとの勝ち点差も6で、自動昇格圏に滑り込むには2戦全勝するしかない上、大分との得失点差は9と開いている。城後は「結果は出てしまったことなので、下を向いていてもしょうがない。まだまだ、J1昇格の望みは自分たちに残されていると思うので。目標としていたJ2優勝での昇格は厳しくなりましたが、プレーオフで上がるチャンスは残されている。少しでも上の順位で戦った方が、有利に進められると思うので、そこに気持ちを切り替えてやっていければ。顔を上げてやっていきたい」と前を向いた。

脳裏には、17年のJ1昇格プレーオフの苦い記憶がある。4位でプレーオフに進み、準決勝では5位の東京Vと対戦。ホームのレベルファイブスタジアムが工事の入ため使えず、ロアッソ熊本のホームえがお健康スタジアムで戦い1-0で勝ったが、決勝は3位の名古屋グランパスとアウェーで対戦し、結果は0-0だったが年間順位で下回るため敗退した。

城後は「プレーオフで、ホームで戦えるかも自分たちの力にかかっている。ちょっとしたところかも知れないけれど、アドバンテージがあれば進め方が変わる。下のチームは、どうしても攻めないと勝てない。気持ちのところも含めて、上の順位に立っておきたい。勝ちにいく姿勢は上でも下でも見せないといけない。当たり前のところをやっていきたい」と語った。

敗戦後、城後はサポーターの待つスタンドに歩み寄った。思わずこうべを垂れるとサポーターからは「まだまだだ!」「まだ、やれるぞ」「俺たちも戦う!」「頑張れ」などと、温かい声援が飛んだ。その温かい一言、一言に城後はスタンドに視線を上げた。

「遠くまで来てもらって、本来であればブーイングをされてもおかしくないと思うけれど、サポーターも悔しい思いを我慢してJ1に上がりたいという気持ちを僕たちに投げかけてくれた。その思いに応えないといけない。サポーターもクラブの皆さんも、必死になって僕たちと戦ってくれている。そういう方のためにも何とかJ1昇格という目標を成し遂げられれば」

長崎・国見高を卒業し、2005年(平17)に入団して以来、福岡一筋で14シーズン。“キング”と呼ばれる城後は、決して後ろは向かない。【村上幸将】