東日本最後の「Jピース」が埋まった。Jリーグ理事会は20日、JFLで年間3位に入ったヴァンラーレ八戸(青森)のJリーグ入会を審議し、全会一致でJ3昇格を決定した。55クラブ目のJリーグチームとなった八戸も同日、八戸市内で記者会見を開き、細越健太郎代表(39)は「J3はスタートライン。その先を目指す」と感極まりながら、新体制で臨む来季以降のプランを明かした。

焦らされた分だけ、感涙の余韻は長かった。Jリーグ理事会は予定の午後3時を過ぎても終わらず、細越代表の携帯電話が鳴ったのは同32分。村井チェアマンから「入会を全会一致で承認させていただきます」との連絡を笑顔で聞いた。「皆さまおめでとうございます。Jクラブの一員としてまた一緒に、歩んでいければ」と会見場に詰め掛けたサポーターに感謝を伝えると、拍手と「ヴァ~ンラーレ」コールで祝福された。左横の葛野昌宏監督(43)にマイクを渡すと「喜びと、大変だったことなどが入り交じった」と、あふれ出る涙を何度もハンカチで拭った。

東北2部からスタートして創設13年目。失意の連続にもくじけず、J3までたどりついた。東日本大震災が起きた11年は2部Vでも変則開催を理由に自動昇格を見送られ、J3ライセンス申請も4度目にして16年にパス。昨年は昇格条件の「4位以内」を5位で逃した。本拠地ダイハツスタジアムなどハード面の整備に尽力した小林真八戸市長(68)は、「悔しい思いをしてきたが、結果が出てうれしい」と感慨に浸った。石川、岐阜、愛知以東では唯一の「J空白県」にもピリオドを打った。

J元年は新体制となる。S級ライセンスを持たない葛野監督は「求めたのは、プロとしての自覚。最後は言わなくても準備できていた」と、昇格を置き土産に退任する。細越代表は「S級を持つ監督候補を探し、葛野監督とはチームに残ってもらえるのか、別の道を探すのか、これから話し合います」と選手補強を含め、さらなるレベルアップに動く。また、J2ライセンス取得条件の1つは「1試合平均の観衆3000人以上」。動員のために「試合前と試合後も楽しめるような、お祭りのようなものを開催できれば。サッカーに興味のない方でも『来たら楽しいよ』と言ってもらえる雰囲気づくりをしたい」と、次のステージ進出を強く意識した。【中島正好】